ファインダーから見た情景 8 いつかわかること

いつかわかること
秋山雄一
フォトグラファー

 高校生の最後の春休み、国内でも一人旅などしたことがないのに、当時ベルリンの壁崩壊直後の興味も手伝って、ハンマー片手にドイツへと旅に出ました。

 行く先々で同じく旅をしている多くの日本人(大学生がほとんどでした)の方に出会いましたが、こういった場所で一人バックパックを背負った高校生というのは親切に扱ってもらえるものなんですね。

 高校生活では部活で上下関係にあけくれていたので、大学生って優しいんだぁと、これから始まる大学生活が楽しみになったのを覚えています。

 バンベルクというドイツの中で一番ドイツらしい街を訪れたとき、突然日本人家族の方に声をかけられ、一緒に街を歩きました。もちろん心の広く優しい方々で、最後には食事までごちそうになってしまいました。

 最初、私も「自分で払います」と言っていたのですが、彼らは「私も昔は多くの方にいろいろと親切にされたんだ、君も将来同じことをする日がくるから、その時に今日のことがわかるよ」と言葉をかけてくれました。

 それから10年以上経ち、これかなと思う「同じこと」の出来事が何回かありました。

 そのたびに当時の旅を思い出し、今でもバンベルクのあの美しい風景が気持ち良く心に思い出されます。