ずっこけ宣教道 第10回 ミャンマー篇
松本望美
北朝鮮宣教会所属
数年前、ミャンマーで働く日本人宣教師を訪ねた。
イギリス領だったこともあり、ヤンゴン市内には所々にヨーロッパを思わせる大きな建物が立ち並んでいた。
「あ! 西武バス!」「こっちは都バスだ。」町には日本の中古バスが走り回っていた。
宣教師の案内で、郊外の孤児院を訪問することに。
市内から郊外に入るとアスファルト道路が一本だけ残り、両脇には砂ぼこりの舞う熱帯の町並みが続いた。
その孤児院は、カチン族の二十五歳のクリスチャン夫婦が孤児を引き取り、共に生活していた。孤児の両親がエイズで亡くなったケースが多かった。
子どもたちは、ロウソクを作り、それを売って学費を稼いでいた。
子どもたちが学校から続々戻ってきたので、風通しのいい高床式住居の広い部屋に集まり、交流することになった。
おもしろいことに、子どもたちの頬には何かで白く塗られていた。
「あの“おてもやん”みたいなものは何ですか?」と聞いてみると、「あれはね、タナカという木をすって、その汁を塗っているんですよ。清涼感があるし、日焼け止めでもあるんです」と宣教師が教えてくれた。
腕を前に組んで話すことが礼儀だそうで、シャイな子どもたちが腕組みして自己紹介するのがかわいかったので、私もあやかりやってみたが「偉そうだからやめて」と友人に注意された。
子どもたちは、みんな和気あいあい。子どもたちに愛を注いでいる夫婦の存在は大きい。
彼らが振りつけの賛美を披露してくれたが、そのキラキラした瞳と純粋な信仰を、神様はさぞ喜ばれているだろう。
帰り道、友人が言った。
「私たちもあの白いやつ塗ってみない? え~と……何だっけ?」「たしか苗字みたいな名前だったよね?」「……スズキ?」「違う。でも、ポピュラーな名前だった。」「サトウ!?」「いや、ワタナベ?」「え? 三文字だったと思う。」「モリタ? ササキ?」と思いだせず、宣教師に「タナカです」と教えてもらった。
「そうだった! フルネームで覚えておこうよ。“タナカおてもやん”って」という友人の意味が分からなかった。
宣教師のご自宅にお邪魔した夜は、停電になった。エアコンも扇風機も止まり、窓を開けても蒸し暑い。それでも「毎日のことです」と平然とした宣教師。さすが。
しばらくして、宣教師はデング熱にかかり、入院。
また、ミャンマー情勢は荒れ、サイクロンで多大な被害が出た。
人生いろいろ、宣教道もいろいろ……ですが、自分ですべてを解釈せずに、神様のみこころに信頼するだけですな。