草ごよみ 12 ヨウシュヤマゴボウ

ヨウシュヤマゴボウ
上條滝子
イラストレーター

 ヨウシュヤマゴボウの紅葉の鮮やかさったら、ちょっとほかにないと思う。

 色付くまでは、いかにも北米原産らしく雑草の中でも群を抜いて大柄で茎も葉も太く大きく、どうしたって全体に大雑把な感じがするのを否定できない。それに私の子供の頃から都会地のどこにでも見かけるごくありふれた草だから、特に取り上げられることもないものだと思う。

 幼い頃の思い出は、艶々と真っ黒に房になって下がる実の方にある。隣家の板塀から伸び出た枝から下がっている実を取って来て、色水遊びをしたのだけれど、それが思いのほか大変な結果を生んでしまった。

 まるでブドウの房のように重く垂れ下がった実をいそいそとままごとの御馳走にしようと取ったのだけれど、ちょっと触れただけでつぶれてしまうので、御馳走作りはたちまちジュース作りに変わり、水の中に落とした濃い実の汁が水にフワフワと広がる様に見とれ、美しい色水作りに夢中になった。気が付くと指先は真っ赤、洋服のあちらこちらは染みだらけ、足元はビショビショになり、たちまち母に見つかって、しっかり怒られた。後始末は幼い子の手に余るものだったのは、英名がインクベリーであることでもうなずける。

 色付いたヨウシュヤマゴボウの一むらは晩秋の日に照らされて、その艶々の真っ黒い実と相まって、茎も葉も混じりっ気なしの飛びっきり鮮やかな朱、紅、真っ赤に美しく燃え上がるようだ。