ブック・レビュー 『宇宙は神が造ったのか?』
中山 良男
東京基督教大学 非常勤講師
科学を通して創造主を知る
それにしても、本書の取り扱う内容は多岐である。宇宙、生命の起源そして意識の問題と非常に興味ある内容について、その分野で著名の研究者や教授が解説を行っている。専門家の話は難解におちいりやすいが、そこは著者がジャーナリストであり取材形式で話が展開するため非常にわかりやすい。一気に最後まで読み通してしまう文章力がある。著者の視点は科学の素人であるため、話の内容が抽象的になりそうになると、具体的に説明をしてほしいと著者が注文を入れる。そのタイミングが絶妙である。答える専門家も、相手が素人であることから、ユーモア溢れる表現で大変わかりやすく語る。このようにして現代科学の研究状況とその問題点が浮き彫りになる。
宇宙の起源を説明する超ひも理論にしても、その最先端の議論についていけるのは、まさにほんの一握りの人々だけであろう。しかし、その中に神を信じるクリスチャン科学者がいること、そして彼らが有神論の立場で研究を行っていることを知ることだけでも、科学とキリスト教の関係を見直すきっかけとなるはずである。ちまたにあふれる科学教養本は無神論的立場であるため、信仰と切り離して理解していた方も多いであろう。その様な現状を打破するパワーが本書には盛り込まれていると感じた。それだけにとどまらず、科学を通して 創造主の存在を知るきっかけになることを本書の著者は希望している。
最終章は、科学時代の読者に宇宙の創造について無神論と有神論の二つの仮説を与えて、どちらを選ぶかと質問を投げかける。提示された数多くの科学的証拠を冷静に考えるならば、創造主説になるとの答えが自然に出てくる。本書はそのような選択が間違いではなく、むしろ、理性的に考えた時の当然の答えであるとする。本書にはそれだけの情報が満載されている。さらに多数の科学、神学、哲学者の言葉、そしてその著書や論文が引用されている。
翻訳も抜群である。繰り返して読みたい。