ブック・レビュー 『乳がんだって生きていくあたし』
KiKi
ゴスペルシンガー
笑いと涙に包まれる一冊
読んでいる途中、そのユニークな表現と等身大で何一つ飾らないクリバリさん自身の姿に、時には吹き出し、笑い、泣かされた。あり得ないが私も登場人物の一人として勝手に参加し(特に医者から診断を受けた時など)、レスポンスしていた。それ位、この作品が身近に感じられたのである。
それは、私も乳がんを患っているからという理由もあるが、何よりも現実を受け入れつつ、心の目は神イエス・キリストに向けられているという点である。
包み隠さず自分の弱さを認めているクリバリさんに私は心のどこかでほっとした。
――私だけじゃないんだ――と。
疑いながらも神が本当にいるのならと祈り求める姿に共感した。
――私もそうだった│と。
この先、人生に何が起こるのかわからない。「死そのものよりも、死にゆく過程が怖いのだ」と著者が言うように、がんという病は心に恐れをもたらし、人生に影を落とす。
しかし不思議なことにこの本は、乳がんをテーマとし、辛い治療や手術などすさまじい人生の内容であるにもかかわらず、読み終えた後の印象はなんとも清々しい。そして力強いメッセージを訴えかけてくる。
どれほどの人がこの本を読んで、笑いや涙に包まれることだろう。そう思うと私はこの本が一人でも多くの人に読まれることを切に願う。
隣人のためにいつもストックしておきたい、一冊である。