ココロの出会い ~世界を旅して 第6回 vol.6 「ぼくの故郷」 ~タイ~
森祐理
福音歌手
東日本を襲った大地震、津波、火災、原発の事故……被災された方々、今も苦しみの中におられる方々の上に、主の慰めを心よりお祈り申し上げます。
連日テレビに映し出される映像を見ていると、16年前の阪神大震災を思い出さずにはいられません。私はあの震災で弟を失い、それをきっかけに各地の被災地で歌うようになりました。今月は、インド洋大津波被災地の一つ、タイ南部を振り返りたいと思います。
2004年12月26日、インド洋沖で発生した大津波は、歴史上最も悲惨と言われるほどの死者・行方不明者を出しました(30万人近く)。私はその2か月後、バンコクとチェンマイでチャリティ音楽会を開きましたが、被災地に入ることはできませんでした。1年後、祈り続ける中で不思議に道が開かれ、被災地となったタイ南部の貧しい村々を回り、歌う機会が与えられたのです。
車で走ると、海岸線から随分離れた所でも船が家に突っ込んだままの状態で残され、漁網が散乱していました。青い海は多くのいのちを飲み込んだとは想像できない穏やかさで、あらためて、私たちは大自然の中で神に生かされた存在なのだと思わされました。
あちこちの集落を回り、子どもたちに学用品やスポーツ道具を配り、一緒に歌いました。あのうれしそうな表情は生涯の宝物です。帰り際に、子どもたちが作文を送ってくれました。
「ぼくは、津波でお母さんを失って、悲しかった。家も失ってつらかった。みんなは、また津波がきたら怖いから引っ越そうと言います。でもぼくは行きません。なぜならここがぼくの故郷だから、ぼくはここで生きていきます」
生まれ育った地を愛する心は、同じなのだと思わされました。今回の大震災で故郷を失った方々の痛みはどれほどかと思います。いつか東日本の被災の地が希望の地として甦る日を願いつつ、天の故郷を見上げて歩んでいかれますよう心底から祈り続けています。
<編集者より>
今月の特集は「ホームレス支援」。無関心でいたくないと「ビッグイシュー」の販売員を見かけると気になるも、買えずにいた。だが今回、初めて購入。ホームレスの自立を支援する300円の雑誌だ。内容もよく、人当たりのよいおじさんからスムーズに買えた。街で見かけたら毎回買おうと思う。(永倉)
昔と比べると個人主義が浸透して、職場や近所、親戚などとのつき合いが希薄な現代社会を、正直なところ「煩わしさがなく楽な時代だ」と歓迎する自分がいました。「絆には傷が含まれる」ことを承知で支援に取り組む奥田師の働きに、衝撃を受けるとともに生き方を見直させられました。(加藤)