98%クリスチャンの国から1%クリスチャンの国に来て 第9回 チミティル・ヴェセル <前編>

アマリア・ネクラエシュ
日本ルーテル教団新潟のぞみルーテル教会員

日本のテレビ番組の好きなところは、ほかの国のドキュメンタリーをたくさん放送することです。日本に来てから、ルーマニアについてのドキュメンタリーを少なくとも三、四つ見ました。とても綺麗でした。革命の後、ヨーロッパの国々がルーマニアについて作るドキュメンタリーは、良さをほとんど無視して、劣ったところばかりを選んでいました。私はそれらを見るたびに、これだけが本当の姿ではないと思って、寂しくなりました。日本のテレビクルーは、ルーマニアの美しさや純粋さ、素朴さ、優しさを正しく見て、心温まる番組を作ってくれるのでとてもうれしいです。
さて数週間前、日本に住むルーマニアの友達から、「ルーマニアがテレビに出ているから、見てよ!」というメールをもらいました。夫と二人で見ると、ルーマニアの中で最もユニークなマラムレシュという地方のドキュメンタリーでした。私にとって憧れの地方で、いつか行ってみたいと思っていました。しかし、故郷から遠い最北の地方でしたので、行くチャンスがなかったのです。
テレビクルーはマラムレシュの美しさと、まだ残っている素朴な生活様式、食文化、人々の信仰を映し出しました……素敵な編集でした。
その中に、世界で最もユニークな墓地〝cimitirul vesel”も登場しました。なぜユニークかですって? その説明は、その名前の中にあります。直訳すると〝ハッピーな墓地”だからです。
それぞれのお墓の空色の十字架の下には、亡くなった人の絵が板に彫られ、カラフルな色がつけられます。絵の下には、独学で腕を磨いた村の芸術家が生前の人柄などを表す詩を書きます。そういう詩や絵はちょっとコミカルなので、ハッピーな墓地と呼ばれるようになりました。実際、そうした十字架を見ると、悲しみよりも楽しい記憶がよみがえってくるのです。もしルーマニアに行くチャンスがあるなら、マラムレシュがお薦めです。
このドキュメンタリーを見て、夫は「どうやって死と距離を置き、ユーモアをもって死と向き合えるの?」と尋ねてきました。そういうことは、日本では考えられないからですって! 
その瞬間に、母方の祖父母たちを思い出しました。憶えている限り、彼らは私が小さいころから、すでに自分たちの死の準備をしていました。それは、幼い私にとっては驚きでした。なぜ彼らは、自分の死について恐れなく話すことができたのでしょう。
To Be Continued…