ビデオ 試写室◆ ビデオ評 49 『ミスター元気』

ミスター元気 ―両腕でアメリカを横断した男―
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

足を失い、両腕でアメリカ大陸を横断、ニューヨークマラソン完走!

 私は、このビデオを見て、感動して若者たちに話したら、みんな知っていたのでビックリしました。すでに、テレビの『知ってるつもり』でも紹介されたそうで、『腕で歩く』という本も出ているそうです。でも知らなかっただけに、新鮮な驚きを感じることができました。

 心が暗くなったとき、明るい人と会っているだけで、脳波が変わり、ホルモンのバランスが変わり、気持ちが軽くなるものです。ほんものの明るさは伝染して、人を癒やします。でも、そんな人に会うことは、そう多くはありません。映画やテレビにはそのような人が出てきますが、テレビを通して心を癒やしてくれるというほどの人は、なかなかいません。

 ところが、この「ミスター元気」は、ビデオを通して、明るさと希望がもらえます。それは、どん底の苦しみを通り抜けて、誰にも奪われない喜びを得た人だからでしょう。

 ボブ・ウィーランドさんは、スポーツ万能で、プロ野球メジャーリーグのメッツやフィリーズなど、いくつものチームからスカウトされていました。最終的にフィリーズとの契約をしようとしたとき、ベトナム戦争に徴兵されました。このことが、彼の人生の分かれ目となりました。この徴兵さえなければ、栄光の道を歩いていたかもしれません。しかし彼は今、「陸軍にもスカウトされてしまったよ!」と、ユーモアたっぷりに語ります。

 彼は、その戦争から生きて帰ってきましたが、183センチの身長が88センチになっていました。両足を失ったのです。

 まず、失意の時期。来る日も来る日も天井を眺めながら、痛みと高熱と闘いました。そして、受容の時期が訪れます。自分の横たわるベッドの枕元に、神様のご臨在を感じた瞬間。この弱さが与えられた状況でこそ、「イエス様は、命を与えるために来てくださったのだ」ということが、はっきりわかりました。

 それに続いたのが、前進の時期でした。「神様がいるなら、どんな困難も乗り越えられる」と信じた彼は、できるスポーツに挑戦します。最初はウエイトリフティングで、全米選手権大会に出場、世界記録を出しながら失格に終わりました。「靴を履いてない」という理由でした。脚のない彼に、どうやって靴が履けるでしょうか? それで永久出場停止!残酷です。

 でも彼は、「神は新しい扉をあけてからしか、古い扉をしめられない」と信じ、陸上競技に挑戦します。そのころは、伝統的な価値観が崩壊して、アメリカ社会が混乱の状態に入った70年代。麻薬、酒におぼれ、希望を失った人で一杯でした。「彼らに、希望があることを知らせたい」。そして始めたのが、両腕で歩いて、アメリカを横断するということだったのです。その距離4479キロを、3年8ヶ月かかって歩きました。その間に、希望を失った人に福音を語り、2000人以上の人が回心しました。さらに自転車競技、トライアスロンにも参加しています。腕だけで「ニューヨークマラソン完走」というのは、信じられないことです。でも成し遂げたのです。

 この秋には、日本のマラソンに参加するために来日したということです。そして今回のビデオ発売。1980円という値段ですから、プレゼントにも使えるでしょう。これを見て、明るさを取り戻す人が、日本中に起こされますように。