八ヶ岳のふもとから 第5回 山菜てんぷら蕎麦

松村登世

この季節、新緑の森の中で目覚める心地よさはことばにできないくらいだ。10分ほど軽い運動をして体を目覚めさせ、一人の祈りの時を持つ。それから階下に降りて朝食の支度をするのが、毎日の習慣になっている。リビングの窓を全開にして、家の中も森の空気に満たされると、急にお腹がすいてくる。
このごろ、専用の土鍋でお米から炊くおかゆの美味しさにはまっている。テレビからの知識だが、沸騰したお湯に洗ったお米を入れて10分くらいかき混ぜながら煮る。そして10分蒸らすという炊き方なのだ。あまりにもおいしいので、つい誰彼となくおすすめしてしまうほど。夫も再々リクエストしてくれる。
さて5月の森は山菜の宝庫、山ウド、コシアブラ、ワラビ、フキ、山ミツバ……それぞれにとり頃があるので毎日のように森の中をうろうろと歩き回っている。山菜はアクが強いので、なんといってもてんぷらが一番だと思う。たくさん採れたフキやワラビはアク出しをして佃煮や煮物にして、都会から来る友達へふるまったりもする。
手打ち蕎麦を作ってくれる友の招きで、山菜てんぷらとともにいただいた蕎麦の味が忘れられず、今年は蕎麦打ちもやってみたいと思っている。
今日もたくさんの山菜を前に、食物談義に花の咲くわが家である。

レシピ recipe

【山菜てんぷら】……ウドの葉、ワラビ、フキの葉、タラの芽、コシアブラ、つりがねにんじんの葉、たんぽぽ、ユキノシタ、山ミツバ、みんなわが山庭にあるものです。それぞれの味と香りを楽しみます。ポイントは、少し低めの温度の油でゆっくり揚げること。
【蕎麦】……手打ち蕎麦が作れれば最高なのですが。私は乾麺をゆでています。つゆは、醤油、みりん、酒をひと煮立ちさせ、だし汁で薄める。薬味に、ねぎとしょうがのすりおろしを添えて。

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編集者より

東日本大震災から1年を経た3月に編集している。あれから1年、あの日を忘れないよう自戒する。そして地元・福島では、放射線との闘いが続いているということも。福島のキャッチフレーズは「うつくしま ふくしま」だったのに。まむしに噛まれたパウロが無事だったように、放射線を浴びる地でも守られるように、今日も祈る。(永倉)

花粉症なのになぜか杉だらけの山を登ってしまいました。息を切らして進むうち、何年も前の別の登山を思い出し、その頃の思いまで戻ったような不思議な感覚がありました。主のみこころならば何でもやろう、という積極的で純粋な姿勢を思い出し、また初心に帰りたいと思わされました。(加藤)