What’s New 森 祐理
デビュー20周年記念リサイタルレポート
礒川道夫
ライフ・クリエイション ディレクター
森 祐理さんの20周年記念に作ったCDと同時期に、彼女がナビゲートしているDVD「目からうろこシリーズ『聖書を読んだサムライたちⅢ ―時代を駆け抜けた三人のなでしこたち―』」を発売した。
来年のNHK大河ドラマの主人公、新島八重、初の日本人女医となった荻野吟子、そして女子教育の先駆者、津田梅子を取り上げた。彼女らは、日本が大きく変わろうとしている明治時期に、しかも女性の地位が低かった時代に、新たな時代の扉を開いていった女性たちである。
このDVDのジャケットを見ていると、森 祐理さんをメンバーに入れたくなる。経済成長に行き詰まりを感じ、閉塞感のある日本、そして地震、原発への不安、また海外に目を向ければ領土問題やTPP問題。そんな時代に、日本各地の教会、刑務所、被災地をまわり、さらにブラジル、タイ、アメリカ、ヨーロッパなど、そして先日はアフリカのルワンダでも森 祐理さんは賛美して来た。最近は彼女に「行っていない大陸は、南極だけだね」と笑いながら話している。しかも、「キリストの愛を伝えること」からそれたことがない。歌手としても一流である。だから20年間、多くの皆様に愛され続けて来たのだろう。
彼女の基本はクラシックである。様々な楽器の音をバックに歌うのも素晴らしいが、今回のリサイタルのようなピアノ一つでクラシックを歌う森 祐理さんの歌声にふれるならば、その静寂の中に神が寄り添っておられることを感じ、聴いている人の心に平安という余韻を残してくれたはずだ。
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20周年記念のリサイタルの第1部では、モーツァルトの曲をじっくりと聞かせてくれた。「荒城の月」「歌を下さい」「この道」と続いていく。きっと選曲には相当迷ったのだろうが、これらの曲を聴いていると、彼女の今後の生き方への決意のようなものを感じさせられる。
第2部は、「サウンド・オブ・ミュージック」で始まり、「歌いつつあゆまん」「遠き国や」と私たちがコンサートでよく耳にして来た森 祐理ワールドに入っていく。「遠き国や」は彼女が歌うことによって、埋もれた宝を発見するように、多くの人たちが歌うようになった曲だ。ぜひCD「ありがとう」に収録されている岩本正樹アレンジバージョンも聴いていただきたい。ギターの音色と森 祐理さんの歌がうまくミックスされていて、関東大震災のときに作詞された、英語講師JV・マーチン氏の絶望の中で光を見出した決意が表現されていると思う。
とにかく、アンコールの最後に歌った「今日の日はさようなら」の歌詞のように、お互いに「また会いましょう」と声をかけたくなるようなリサイタルだった。
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