ブック・レビュー 真の牧会者の基本姿勢を再確認するために

 『聖書から考える牧会』
聖書神学舎教師会 編
同盟福音・大垣キリスト教会牧師/東海聖書神学塾・教務主任

主に「礼拝」に関する聖書的理解を提示してきた、「聖書神学舎教師会」シリーズに、新しく「牧会」に関する講義集が加えられました。一読すれば、「聖書から『真の牧会』とは、『真の牧会者』とは何かを考える」と本の帯にあるとおりの内容であることがわかります。五人の教師による講演は、いずれも、聖書神学舎の神学教育に関する基本的な理念と確信どおりの、丁寧な聖書釈義に基いた論考で、コリント人への手紙第一、テモテの手紙第一、創世記、エゼキエル書、ゼカリヤ書から、真の牧会のあるべき姿と真の牧会者の持つべき基本姿勢を、指し示しています。
最後の講義は、「わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい」(マタイ28・20)という教会の主の教育命令に従って、実際に奉仕している牧師たちが、みことばから教えられたことを守れるようになることを願って提示された具体的な指針です。
「牧会は愛し抜くことへの挑戦である」(四二頁)「いつの時代でも、真の牧会者は神ご自身である」(一四八頁)「新約時代の牧者が目指すべきところは、牧者としてのイエス・キリストの姿に倣うことである」(二二二頁)という言明などは、すべての牧会者が心に刻むべきことばでしょう。
このように、牧師自身の人格と資質のほうが、能力や働きよりも重要であるという聖書的な牧師像は明示されていますが、牧会する教会の目的や使命、それらに密接に関連する牧会の目的やあり方などについても、さらなる聖書的な考察を期待します。
また、「牧する」ということばの釈義的理解に集中した結果でしょうが、「羊の群れ」である教会の牧会だけに考察が限定されたように思われますので、ぜひ次は、「神の国」や「神の家族」、また「キリストのからだ」である教会、さらに、「公同の教会」や「世にある教会」の牧会と牧会者のあり方についても、聖書から学び、その研究成果をシリーズに加えていただくことを希望します。