ブック・レビュー 教会やミニストリーのリーダーが抱える闇とは
川崎 廣
山形クリスチャンフェロシップ牧師
「二十世紀の終わりの二十年間に、キリスト教会およびキリスト教系諸団体のリーダーの間で、重大な失態が急増した。……こうした過ちの原因や結果について、また過ちを防ぐのに有効な対策について……何かをしなければならない」(八頁)と思ったことを、著者は序文で語る。たしかに、キリスト教界に限らず、過去の多くのリーダーは、その人に期待されている生涯を全うしていないことが多い。聖書に出てくるリーダーたちも、神から期待されている生涯を全うできた人物は、それほど多くないと言われている。
著者は、前提として六つのことを提示する(一一頁)。
1.どのリーダーもある程度の人格的機能不全を患っている。
2.リーダーとして成功したいと、願う背後に、人格的機能不全が原動力として働いていることがある。
3.自分の個性には闇の部分があること、また人格的機能不全によって自分が駆り立てられていることを、多くのリーダーは気づいていない。
4.この闇の部分がリーダーをつまずかせて、多くの場合重大な失敗を犯させる。
5.自分自身の闇の部分と、その闇の部分を生じさせた機能不全とを理解するならば、悪い影響を防ぐか、少なくとも和らげることができる。
6.聖書は、闇の部分を克服しようと努力しているとき、助けとなる。
本書は、三部構成で、第一部の「闇の部分を理解する」では、著者自身、米国の歴代大統領、著名なリーダーの例を挙げながら、闇の部分とはどういうものかを明らかにしている。第二部の「闇の部分を発見する」では、聖書に出てくるリーダーの例を挙げながら、自分自身の闇の部分とは何かを見極めるのを助けてくれる。第三部の「闇の部分を贖う」では、闇の部分を克服するための「第十四章 霊的な堆肥作り」という方法など、成功の中に潜んでいる闇の部分に不意をつかれる前に、それを克服するための具体的な手順が示されている。
神から期待されている生涯を全うできるように、日本のすべてのリーダーと、将来リーダーとして立とうとする人々に一読をお勧めしたい。