ブック・レビュー 読後の清涼感満点!
山口陽一
東京基督教大学教授
三浦綾子の『道ありき』(新潮文庫)を読み、信仰のリアリティーを教えられたのは四十年も前のことです。
大嶋重德さんの『おかんとボクの信仰継承』を読み、これは現代の『道ありき』だなと思いました。自らを飾ることもなく、三世代の家族をまな板に載せ、軽やかに突っ込み、オチをつけ、ほのぼのと語る信仰は、何といきいきしていることでしょう。この若き伝道者の賜物は、すがすがしいばかりです。
いいかげんだが信仰の勘所のいい「おかん」、聖日厳守の聖書読み「でも、まだワシは信じへんで」と言い続ける父親、しっかり者だけどやや天然な姉ちゃんとよく気がつく優しい妹、信仰だけを地上の家族に残して天に召されたおばあちゃんが、おかんとボクの家族です。
やがて結婚し、信仰を伝える立場になった「ボクの親父修行」では、忙しい(らしい)夫から、家庭礼拝を任された妻の裕香さんが輝きます。リビングでまったりしているボクに、「四十代に近づいてますます渋くなった。すてき」と本気で言うなど、「ほめて伸ばす」が大嶋家の家訓だそうです。クリスマスはプレゼントをもらう日ではなく、あげる日だというすばらしい教えにより、小学校一年生(当時)の長女、香澄さんは、弟の德くんと二人で両親にラーメンと餃子をご馳走します。「ごちそうさまでした。本当に美味しかったよ。ありがとう」
ということで、まことに正直な信仰の証し百%、笑いと泣きが七対三、家族三代のコミュニケーション・スキル満載です。気軽にテンポよく書かれていますが、因習の強い田舎での信仰の筋の通し方、結婚と性についての明確な指針、教理教育の大切さ、思春期の心の見守り方、惜しみない献げもの、職業と召命、父親の役割、社会に貢献するクリスチャン等々……が、神の恩寵の神学に裏付けられてしっかりと語られているところが、まことに秀逸です。
病める現代社会における回復のためのキーワードのひとつは「家族」ですが、この本は、家族をキリストの福音に導く道しるべです。