わが家の小さな食卓から
愛し合う二人のための結婚講座
第11回 結婚にはメンテナンスが必要
大嶋裕香
1973年東京生まれ。宣教団体でキリスト教雑誌の編集、校正を手がける。99年にキリスト者学生会(KGK)主事の夫と結婚後、浦和、神戸、金沢と転々としながら年間100~200名近い学生、卒業生を自宅に迎える。KGKを中心に、夫と共に結婚セミナーで奉仕。その傍ら、自宅でパン教室、料理教室を開き、子どもたちにパン作りを教えている。13歳の娘と10歳の息子の母親。
結婚生活には定期的なメンテナンスが必要ではないでしょうか。車が必ず二年ごとに車検をするように(古い車だと一年ごとです)、折々に結婚生活の原動力となるエンジンやターニングベルトを点検する必要を感じます。生活するうちにすりきれたり、古びていったりする部分はないでしょうか。
わが家の食卓で結婚の学びをしたカップルの中でも、定期的に学びを続ける方たちがおられます。一年ごとや二年ごとにわが家の食卓で近況を分かち合い、いくつかの質問を一緒に考えることにしています。
まずは第一回で取り上げた「愛されことば、悲しみことば」を再び分かち合います。「愛されことば」とは、相手に言われると愛を感じることばや行動のこと。「悲しみことば」は、相手に言われると悲しみを感じることばや行動のことです。
この「愛されことば、悲しみことば」は、日々変化するので、結婚後の学びごとに再確認するようにしています。たとえば結婚当初は、「二人でおしゃれなお店に食事に行くこと」が愛されことばだったのが、子どもが生まれたら、「子どもを見てくれている間に一人の時間を持つこと」に変化したりします。
ですから、「彼は唐揚げが好きなんだから、唐揚げさえ食べさせておけば大丈夫よ」というわけにはいきません。体調の悪い時やさっぱりしたものが食べたい時もあるのです。絶えず自分の状態を伴侶に知ってもらうこと、また伴侶の状態を知り、注目し続けていくことが、みずみずしい結婚生活を続けていく秘訣ではないでしょうか。
また、結婚前に分かち合った内容よりも、結婚後の「愛されことば、悲しみことば」は、より具体的で生活感のあるものに変化するのも面白いところです。
先日わが家に来られたカップルは、子どもが生まれてから生活が激変したとのこと。「『パパすごいね!』と子どもの前で妻がほめてくれることが今の自分の愛されことばです」と目尻が下がりっぱなしのご主人。育児にも積極的に参加する、今流行の「イクメン」まっしぐらの様子でした。
一方の奥さんは、「子どもにいつもかかりっきりなので、一人の時間を持てるとほっとします。主人が子どもを見てくれることが私の愛されことばです。その間にゆっくりスーパーで買い物するのが楽しみ」だそうです。
このように具体的に分かち合うと、「なるほど、あの言葉が彼にヒットしたのね」、「彼女がリフレッシュできるなら、またできることをやってあげよう」と、互いにモチベーションがあがります。「愛されことば」を確認することは、車にガソリンを入れ、エンジンをかけることに似ているかもしれません。愛のガソリンで伴侶の心を満たし、また走り出せるようにするのです。
また、「悲しみことば」を分かち合うことは、伴侶の必要や自分の足りないところを知り、より良い夫婦関係を築いていく原動力となります。「悲しみことば」の確認は、車のさまざまな部品が故障していないか、擦り切れていないかの定期点検のようです。心ない自分の言葉や態度で伴侶が傷ついていないでしょうか。
もちろん、私たち夫婦も「最近の愛されことば、悲しみことば」を共に分かち合います。いつでも最新版の愛されことば、悲しみことばに更新していくことは、私たの結婚生活の大きな助けになってきました。絶えず「相手に伝わることば」を磨いていくことが問われているように思います。
ですから、この学びの最後に、「今まで伝えていなかったけれど、相手に感謝していること三つ」も互いに伝え合うようにしています。
ある共働きの新婚カップルは、ご主人が仕事で忙しく、休みもなかなか合わせられず、それが原因でけんかになったこともあったそうです。しかし、ご主人が奥さんに向かって、「出勤が多くてさびしい思いをさせているけれど、妻として支えようとしてくれてありがとう。お弁当を作ってくれること、夕食を作ってくれることに感謝しています」と伝えました。すると、奥さんは目に涙をためながら、「早く帰ろうと努力してくれて嬉しい。毎晩『今日も一日ありがとう』と言ってくれるよね。どんなに疲れていてもお皿洗いとお風呂掃除をしてくれるよね」と、ご主人への感謝のことばが次々に飛び出しました。互いの心に愛のガソリンが満タン注入された瞬間でした。二人はまたエンジンフル稼働で走り出せることでしょう。
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