ブック・レビュー 放射能汚染の実態に目を向けるために
篠原利治
日本フリーメソジスト教団 大阪城東教会 牧師
東日本大震災後の原発問題がやや忘れられつつあるなか、この重要な課題について、再度、警鐘を鳴らす良書。それがこの書です。日本バプテスト連盟鳥栖教会の野中宏樹牧師と、福岡国際教会の木村公一牧師の共著『原発はもう手放しましょう』のブックレットは、原発問題について初心者でも理解しやすく、キリスト者として現状をいち早く把握するための良書です。ぜひ一読をお勧めいたします。
この書は、川内原発だけでなく高浜原発までも再稼働させようとする今日、もう一度あらためてその危険性を訴える思いが満ち満ちています。
特に「放射能汚染の広がり」、その実態に目を向けるためにも、本書の解説と予備知識は必要です。また「低線量被曝」をめぐる問題は、原発労働者のみならず、今後、第一次産業(農業、林業、水産業)の維持をめぐって、食料や土壌の問題に至ります。そして、まだまだ地下水にまで流れている放射能汚染の影響は、この日本の問題になります。今日、「日本経済が成り立たないので、原発はなくせない。現実的に考えてほしい」という声を、経済界の人々、政治家や官僚からよく聞きます。それも事実、日本のエネルギー問題は、今や崖っぷちです。しかし、もうそれだけでは、この日本は立ちゆけないのです。本当に困った問題です。
この「3・11ブックレット」は、二〇一二年二月の『キリスト者として“原発”を考える』を出版してから、十三冊を数えるとお聞きしました。今後まだまだどうなるか全く予想がつかない原発問題に対して、私たちは逃げずに、いい加減にならずに、目を開いて理解を深めて、声をあげなければなりません。祈りの手を挙げなければなりません。