flower note 4 球根が秘めた大きな力
おちあい まちこ
~今月の植物~
チューリップ
チューリップはユリ科チューリップ属の植物。球根ができ、形態は有皮鱗茎。和名は鬱金香。この花の香りがスパイスまたは食品を黄色く染めるのに使われるウコンのように、ほこり臭いことに由来する。
春を彩るチューリップ。幼い頃に絵に描いたとか、球根を植えて育てたという経験を誰もが持っておられることでしょう。
フランドル絵画のモチ-フになったり、17世紀には投機の対象としてバブルを引き起こし、歴史に影響を与えたりしたほど、人々に古くから愛されているチューリップに興味を引かれて、私は憧れのオランダを旅したことがあります。夏だったので、チューリップで有名なキューケンホフ公園は閉鎖されていましたが、マーケットの花のテントには、親指くらいの大きさの細いチューリップが20本ほど束ねられて並んでいました。色とりどりのチューリップの中から赤を選び、ホテルの部屋にあったガラスのコップに活けて窓辺に飾りました。日本はまさにバブルの時期。花市場の見学に行くと、レールの上にずらりと並んだ切り花満載のカートのほとんどに「JPN(日本向け)」のプレートが下がっていました。売れ残りを現地や近隣の国の方たちが買うという話を聞き、「日本人はなんて贅沢なんだろう!」と驚きました。市場では、日本では見たことがない様々な種類のチューリップの球根をたくさん買いましたが、規定の「100球」を超えてしまったので、超過分を友人に持って帰ってもらったという、ちょっと恥ずかしい思い出もあります。
写真は、ベランダで育てたチューリップの原種です。「植えっぱなしチューリップ」のコピーに惹かれ、小さな球根を買いました。とりあえずと空いているビニールポットに植えて数か月。つぼみが出てきたので写真を撮ろうと部屋に入れましたが、成長するにつれて茎が長く伸び、花が重みで垂れ下がってきたので、思いきって茎を切り、花瓶に活けました。チューリップは光の方へと花を向ける植物で、夜にはしぼみ、光が当たると再び咲き始めます。翌朝カーテンを開けたら、だらんと下がっていたチューリップの花が上を向いて、まるで踊るように咲いていました。小さな球根が秘めた大きな力と輝く光。恵みをいっぱい感じたひとときでした。