愛しきことば 3 ことばと人のつながり
松田 圭子
今年の復活祭は、3月27日です。そこで3月号は、復活祭にふさわしいマルティン・ルターのことばを選びました。「神さまは、復活の約束を聖書のうちばかりでなく、春の若葉の一枚一枚に書き記していらっしゃる。」 もう5?6年前になるでしょうか、いつものように作品にすることばを探しているとき、古い時代の詩などが載っている本の中にこのことばを見つけました。ルターとありましたので、当然英文も容易に探せると思っていましたが、なかなか簡単には見つけることが出来ずにおりました。そこで、教会の方でドイツ文学に詳しいICU(国際基督教大学)の先生に相談したところ、その先生からさらに鎌倉の牧師、そして立教女学院の先生というようにつないでくださり、最終的には、『卓上語録』(第4巻 4542番。ワイマール版ルター全集による)の箇所であると調べてくださいました。またこの書物の時代のドイツ語表記は500年前のもので、ラテン語とドイツ語が交じり合っていて現在の正書法と若干の違いがあるとのことで、ICUの先生が、カリグラフィー作品にしやすいようにと現代表記に当てはめてくださったのです。先生方のつながりや熱心さには、本当に驚きました。そしてこの箇所は、学術的な点から見ても素晴らしいものなので、ヨーロッパの博物館で保存修復に使用されている本物の皮の羊皮紙を用いて作品にしました。その作品は、個展に展示後、お世話になった牧師のもとにおかせていただくことになりました。このことばは、先生方のお力によって原文にたどり着いたのですが、このまま英文にしたいと思い、いつも英訳でお世話になっている友人に頼んでみました。するとルターのイースターのことばとして英文があると知らせてくれました。表紙に書いた英文が、それです。これは最近、翻訳本に“超訳”と見かけますが、まさにこの原文の超訳であると思います。現代人に受け入れやすい庶民的なことばになっています。ことば探しには、いつもさまざまなドラマが生まれます。たくさんの方々に支えられ作品制作に取り組めることは、とてもありがたいことです。心より感謝しております。