書評 主の証しを曲げた過去を繰り返さないために
『改訂版 小羊の王国―黙示録は終末について何を語っているのか』
岡山英雄 著
四六判 1,800円+税
いのちのことば社
日本同盟基督教団 徳丸町キリスト教会 牧師 朝岡 勝
時代が要求した出版というべきであろう。「十四年前、本書の初版が出版されたとき、二十一世紀には軍事、情報、経済の分野において危機が深刻化すると指摘したが、それは急速に進んでいる」(二八五頁)とあるように、いま、この国と世界は激動・混迷の中にある。そこでヨハネの黙示録は何を語るのか。筆者は言う。「黙示録は世界の終末、破滅を宣言する恐怖の書ではない。この書は現代の問題の最先端のその先を見通して、私たちに広い視野と展望を与え、人類の歴史の完成について、その道筋を示す希望の書である」(三頁)。
本書の中心にあるのは、第二章の小羊キリストが統治する「小羊の王国」の姿と、第三章の「獣の国」の姿である。特に「竜、獣、にせ預言者、大バビロン、大淫婦」の釈義は、この国の現状を踏まえて大幅に増補され、第四章では、小羊キリストの再臨による「小羊の王国」の勝利と救いの完成の幻が示される。
特に第四章三の「新しいエルサレム」は圧巻である。ここには「獣の国」に対抗する「小羊の王国」の民の姿が明確に示される。「神の民はたとえ少数者として試練のうちを歩むとしても、暴力的な世界で小羊の非暴力を貫き、聖霊による鋭い識別力によって欺瞞の力の本質を見抜き、天のエルサレムの民として、汚れの満ちる世界でキリストの聖さを現し、永遠に価値あるもののために生きていく。……万物の和解の日を待ち望みつつ、和解と赦しの共同体として生き、屠られた小羊の十字架の勝利にあずかり、死をも恐れず証言を続けていく」(二五五頁)。
戦後七十年を過ぎ、私たちは歴史の転換点に立たされている。主の証しを曲げた過去を繰り返さないために、御言葉に聴き、歴史に学ばなければならない。「教会の力強い証言のためには、鋭い歴史的感覚が必要である。現実への深い歴史的洞察は、困難な時代において証人として生きる力を与える」(一九頁)。本書によって、教会がこの力を帯びることをひたすら願う。