キリスト者としての歩みを振り返る助け

単立 ニューライフキリスト教会 牧師 豊田信行

『情緒的に健康なリーダー・信徒をめざして―内面の成長が、家族を、教会を、世界を変える』
ピーター・スキャゼロ 著
鈴木茂・鈴木敦子 訳

B6判 2,800円+税 いのちのことば社

本書、『情緒的に健康なリーダー・信徒をめざして』はキリスト者の健康な情緒が健全な信仰と切り離せないことを教えています。個人的な見解にはなりますが、キリスト者の情緒面は信仰の歩みの「妨げ」になるとの誤った扱いを受けてきた経緯があるのではないでしょうか。
長い期間、理性主義の影響下にあったキリスト教は、キリスト者の情緒面を信仰と同等には扱ってこなかったのです。心に憂いがあるとき、「いつも喜んでいなさい」、「いつも感謝しなさい」との戒めによって片づけられたり、喪失を悲しむことの幸いを積極的に認めなかったり、怒りを抑圧したり、放置したままにしていることが少なくないように思えます。
二十世紀、西欧や日本の教会を席巻したカウンセリング・ブームはその反動だろうと思います。著者のピーター・スキャゼロ師は自らの信仰生活を振り返ったとき、いかに信仰と情緒面を切り離そうとしてきたのか、その事実に愕然とします。著者は信頼していた牧会スタッフに裏切られ、スペイン語部の礼拝が分裂したとき、自らの心に渦巻く怒りや喪失感と真正面から向き合うことを避け、平静を装うことに努めたのです。しかし、奥様が怒りに満ちた夫の導く礼拝に出席することを拒んだことがきっかけとなり、「第二の回心」と名づけた方向転換を経験し、情緒的に健康なリーダーとなる歩みが始まりました。
「イエスさまが言おうとしているのは、私たちの努力は、イエスさまご自身の愛によって結び合わされた関係から流れ出たものでなければ、何の価値もない、とおっしゃっているのです」(二〇四頁)
本書は「イエスにとどまること」の具体的なガイドブックとなるだけでなく、キリスト者としての歩みを振り返る助けとなることでしょう。健康な情緒、健全な信仰を願い求めるすべての方にお薦めします。翻訳の労をとってくださった鈴木先生ご夫妻には心からの感謝の意を表したいと思います。