書評Books 他の同労者と語り合いながら読む

聖学院大学教授/臨床心理士  藤掛 明

『牧師のレジリエンス 逆境でも燃え尽きない再起力』
ジョン・ヒューレット 著
植木象平 訳

牧師は、その仕事の困難さゆえに、バーンアウト(燃え尽き)したり、場合によっては志半ばで離職することさえある。本書は、牧師がその奉仕を全うするために必要な、変化に対するレジリエンス(再起力)を扱う。それも牧師の献身から引退までのライフサイクルを見据えながら、その関連の中で、このレジリエンスの必要性を説くのである。

著者は、牧師のライフサイクルを四つに区切って、マラソンや駅伝になぞらえながら、順に「出発する」「到着する」「導く」「完走する」と名付ける。

最初の二つの区分はまだ走る前の準備段階であり、献身(出発)し、実際の奉仕場に到着するまでを取り上げる。三つ目の区分の「導く」で、いよいよ走り出す。そこでは、ランナーとして成長する姿を描き、牧師のリーダーシップ、アイデンティティ、霊的ケア、人材育成といったテーマが続く。どれも魅力のある内容である。

しかし、著者はここで終わらない。「完走」を目指し、ゴールのテープを切ったら後はどうでもよいのではない。自分の働きを次世代に引き継ぎ、引退後の自分の新たな仕事を考え、再びアイデンティティの問題を扱う。教会役員会に向けても、牧師交代時・引退時のためのガイドラインについてまとめているが、実際的であり、実に本書らしいと思わされた。

さて、本書は、実践のための、そして分かち合いのための問いかけに満ちた書である。事実、討議のための質問や黙想のための問いかけ(招き)が数多く用意されている。しかしそれだけではない。アンケートの回答の引用からも、牧師の証しの中の何げないセリフからも、広い意味での著者からの問いかけを感じさせるものがある。

本書はひとりで読むだけでも良い学びになるが、他の同労者と語り合いながら読むならば、さらにその幾倍もの収穫が期待できると思う。

そして、本書が引退期の牧師のみならず、人生のあらゆる時期にいても同じように魅力のある書であることも最後に強調しておきたい。