書評Books あなたが福音の恵みに生きることを望むなら
福音伝道教団・大間々キリスト教会/尾島キリスト教会 牧師 髙木寛
『パウロの福音を生きる ローマ人への手紙5章~8章4節』
鞭木由行 著
四六判・定価3,300円(税込)
いのちのことば社
本書は、著者が「あとがき」で述べているように、神学生のとき、「救われた今でもなぜキリスト者は罪を犯すのか」その答えは「神は……肉において罪を処罰された」(ローマ8・3)ここに鍵があるのではないか。この問いを与えられたときから、約四十年間の長きにわたってローマ人への手紙に真摯に向き合い続け、教会で語った説教を土台に、五章一節から八章四節までを四十九回に分けて講解しています。
それは、キリスト者にとって、つねに古くて新しい課題「罪からの解放」「聖められていく勝利の秘訣」「真に福音を生きる」ことへの回答でもあります。
四十九回の講解のうち、四節まで二回、三節まで四回、残りの四十三回のうち、二十回は二節、二十三回は一節のみを講解し、大変丁寧な釈義と講解がなされています。
特にパウロの難しい文章構造をわかりやすく解説し、日本語聖書の翻訳上の課題がある箇所は、新改訳聖書2017を基本に据え、他の日本語訳聖書と比較検討を加え、その意味を解き明かし、パウロの神学に肉迫し、福音理解を浮き彫りにしていきます。読者はいつの間にかパウロに引き寄せられているご自分を見いだすことでしょう。それだけでなく各回毎に読者は応答を促される、まさに講解説教となっています。
一回当たり文字数は約五千字で、二十分位の講解説教となっています。毎回読んでは黙想し、聖書からの問いかけに応答しながら読み進めるなら豊かな霊的養いとなり、真に福音に生きることを始めることになるでしょう。また、聖書研究会や大人の教会学校の良い教材として用いるのも有益です。さらに、講解説教を学ぶ神学生や新任の牧師たちにとっても大変役に立つことでしょう。
今こそ日本において、さらに多くのキリスト者が真に福音に生きることを求められているのではないでしょうか。教派を超えて日本の多くのキリスト者に一読をお薦めする本です。