328 時代を見る眼 コロナ禍の介護〔1〕 地上のみくにを目指して

グループホームみくに 代表
菊谷利昭

私たちの生活を一変させ、また今後それと向き合っていかなければならない新型コロナウイルス感染症と直面している一介護施設の現場を、3回シリーズで書かせていただきます。
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「グループホームみくに」は、千葉県松戸市を流れる江戸川のほとりにあります。
敷地内には、「松戸の園」と「栄の園」の2棟があり、職員の子どもを預かる保育所も併設しています。高齢者のグループホームで、総勢36名の認知症の方々が暮らしています。
この地ですでに16年が経ち、地域住民の協力は運営には欠かすことができません。松戸市でも高齢化が進んでいたこともあり、この地域は開設当時から介護にはとりわけ関心が高く、いろいろと地域の皆さんのお力をお借りしています。

納涼祭などでは利用者様の介護で手が離せない職員に代わり、設営、食事の支度、踊りや太鼓の出し物、後片付けまで何から何までお世話になっています。加えて、地域で主催する運動会や盆踊りにもいつもご招待していただき、利用者様も楽しみにしておられました。

職員と家族での両輪の介護に、地域住民の協力が加わると、厚みのある介護が生まれ、利用者様からたくさんの笑顔を引き出せることを痛感しました。

それだけに、地域の応援に私たちも奮起して、「地上のみくに」を目指して努力を積み上げてきた16年間でした。

利用者様も加齢で少しずつ行動範囲が狭まり楽しみが減っても、まだ散歩やご家族との面会の楽しみが残っていたところに、突如として2020年の1月に、中国の武漢での新型コロナウイルスの報道が流れ、2月に横浜港に停泊していたダイヤモンド・プリンセス号で感染者が続出したことで一気に国内でも感染拡大の危機感が強まって、私たち介護現場でも感染予防を以前に増して徹底しました。

過去に当ホームではノロウイルスを発症させてしまい、利用者様が認知症を患っているがゆえに感染を食い止めることが容易でない苦い経験をしています。職員には何度も何度も注意喚起したはずだったのが、2021年3月に私たちの感染予防をよそ目に、新型コロナウイルスは忍び込んできました。
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次回は、新型コロナウイルスに感染した当時の様子をお伝えします。