特集『教会福音讃美歌』十周年を迎えて 『教会福音讃美歌』についてのQ&A
今年、発行から10年を迎える『教会福音讃美歌』。「礼拝内での讃美歌」を意識し、福音派の諸教会が協力して作成された讃美歌集の魅力を編纂に携わった方々からお聞きしました。
日本福音キリスト教会連合、菅生キリスト教会牧師 中山信児氏
Q 収録曲を決める際には、さまざまな意見に分かれることもあって大変だったと思うのですが。
たしかに意見が割れる場面は何度も通りましたし、厳しい議論もたくさんありました。けれども、大きな方向性が決まっていたので、それが深刻な対立になることはなかったと思います。その方向性とは、日本の福音派の礼拝で会衆が歌うための讃美歌集ということです。
何かあるたびに、いつもこの原点に返って、そこから自分の考えや全体の作業を見直すことができました。おかげで、妥協ではなく、互いに譲り合い、学び合いながら良い作業ができたと思います。我々自身もこの作業を通して多くの恵みをいただいたと思います。
Q 「歌詞の見直し」については、翻訳しなおした曲としなかった曲があるようですが。
『讃美歌』(一九五四年)や『聖歌』(一九五八年)には大変素晴らしい歌詞が数多く収録されています。しかしそれらの出版から半世紀以上が経ち、その間に日本語は大きく変わりました。たとえば、四十歳より上の世代には理解でき、美しく懐かしく感じることばが、十代、二十代の人には古くてわからないということがあります。今回の編集作業では、古くてもわかりやすく美しいことばはできるかぎり残すようにしましたが、よく歌われているものでも、〝そのまま次の世代に手渡すのは難しい”と判断したものは改訳することにしました。
日本同盟基督教団・希望聖書教会牧師 安藤能成氏
Q 讃美歌の最大の魅力とはなんでしょうか。
相矛盾して聞こえるかもしれませんが、信仰の歌である讃美歌は、それを歌っているだけでも信仰が高揚していくということ。歌詞によって広い意味でのキリスト教神学が伝わること。またあらゆる人々の中に普遍的な広がりをもって届くこと。それは年齢や社会層の異なる人々が一堂に会する教会で歌われる上で、必要なことです。
讃美歌の美しさは一般社会でも受け入れられ、コマーシャルのバックミュージックとして使われる例もあります。またある人は絶望の中で自殺しようとしていた時に讃美歌が聞こえてきて、思いとどまって信仰に導かれました。「イスラエルの賛美を住まいとしておられる」主のお働きでしょうか。
Q「福音派の立場」としての讃美歌集ということですが、ほかの讃美歌集との違いは何ですか。
「福音」の理解において、イエス・キリストの十字架と復活が信仰告白の重要な柱であることを明確にしていること。そして、教会で主を礼拝することを基本にしながら、いろいろなシチュエーションと幅広い世代に用いられることを考慮しています。
そのため、内容も既成の讃美歌集からのものや海外の新しい讃美歌、現代日本人の創作讃美歌など幅広く収録しています。愛唱讃美歌も新しい翻訳を試みていますが、すでに永く定着している歌詞は文語体であっても採用しています。
福音讃美歌協会 讃美歌委員 土井康司氏
Q ゆっくりとしたメロディーが多かった従来の讃美歌集と比べて、元気で速いテンポの曲も多いですね。
『讃美歌』と比べるとそう言えるかもしれませんが、福音派が多く用いてきた『聖歌』には、元気でテンポの速い曲が多く、それは伝統のひとつとして継承しています。『聖歌』をご存じの方であれば、『教会福音讃美歌』の大部分は無理なく歌えることでしょう。
また現代讃美歌として、ギターなどの伴奏が合う曲も多く採用しました。一方、ゆっくりとした讃美歌も多数採用しています。
メロディーという点では、歴史のある古いもの、今年に入って作られた新しいもの、欧米だけでなく世界各地で生まれたもの、日本で生まれたものなど、バラエティーに富んだものになっています。
(本誌二〇一一年一~五月号「ミニ連載」より抜粋)
キャプション
4頁 好評発売中 『教会福音讃美歌 福音讃美歌協会 編 定価4,180円(税込)
5頁 『新撰讃美歌』(1888年)
6頁 教会福音讃美歌オーディオ・コンサートでの講演の様子(左・筆者、右・葛巻善郎氏)