さわり読み 話題の新刊『ブルーリボンの祈り』 ちょっとさわり読み
「苦しみに会ったことは、私にとってしあわせでした。私はそれであなたのおきてを学びました。あなたの御口のおしえは、私にとって幾千の金銀にまさるものです」(詩篇119・71、72)
金木犀の香りが街角に漂う秋、十月。五日は、拉致された娘めぐみの三十九回目の誕生日。十三歳からのこの幾年間か、恐怖と寂しさに耐えながら、何度、金木犀の香りに日本の家族や友人たちへの思いをかきたてられたことでしょう。
今年は期せずして誕生日前日の四日に、昨年帰国なさった曽我ひとみさんから速達が届きました。「何かしら?」と開けて読むと、思いがけず、北朝鮮でめぐみと過ごされた十月五日のことが書いてありました。拉致されてから二年目、めぐみの十五歳の誕生日にひとみさんとめぐみは、指導員の車で街をドライブし、二人ともごきげんだったこと。……そのおばさんは、家でバースデー・ケーキを作って持って来てくださり、「お母さんといっしょだったら、もっとおいしいご馳走を作ってくれたでしょうに、ごめんね」と言われたこと。そして、二人ともほんとうの娘以上に可愛がっていただいたことなどが書かれてあり、たいへん驚きました。
いったいどのように過ごしているのかと、さまざまなことを思い巡らし続けていた私たちにとって、一時的ではあれ、このように優しい方に出会い、温かい思いやりの中で過ごしていた娘の様子を知り、神さまのお護りを感謝いたしました。
ひとみさんとは、しばらくの間いっしょに過ごしたようですが、その後のそれぞれの生活はまったく知らなかったそうです。ひとみさんが帰国される時に、初めてめぐみの「死亡」を知らされ、たいへんショックを受けられたとのことでした。
私はこのように、まるで物語のようないろいろなショックを次々と受けながらも今日までやってこられたのは、さまざまな出会いがあったからです。あの新潟での絶望の時に巡り会ったマクダニエル宣教師ご夫妻、事件直後、最初からかかわってくださった友人たち、そして、何より大切な聖書との出会いがありました。ことに、この本を共に執筆した友人たちとは、教会生活や信仰生活を共にし、種々の生活の中で互いに語り合い、祈りを共有してきました。