CD Review ◆ CD評 『鳥のうた 』キリストの誕生を祝って

『鳥のうた』キリストの誕生を祝って
西 由起子
ソプラノ歌手

極上のビロードの声、すべての人に向けられた贈り物

 「神は、どのような苦しみのときにも、私たちを慰めてくださいます。こうして、私たちも、自分自身が神から受ける慰めによって、どのような苦しみの中にいる人をも慰めることができるのです。それは、私たちにキリストの苦難があふれているように、慰めもまたキリストによってあふれているからです。」(第二コリント一章四、五節)

 工藤篤子さんの声はまるで極上のビロードのようである。この温かな、聴き手を包み込む歌声はどこから出てくるのだろうか…?以前、工藤さんに奏楽を頼まれたことのある私の友人から、工藤さんの信仰とお人柄について伺ってはいたが、今回今までの歩みを記した証しを拝読して、その歌声の中には多くの試練・苦しみの末に辿りついた「主にある平安」があることを思わされた。

 曲目はクリスマスの讃美歌・オラトリオから、ゴスペル・ポップスに至るまで(!)バラエティに富んでいて、昔のCMにあった「一粒で二度美味しい」どころではない。そして工藤さんはどの曲もその美しい声と深い賛美の心で、素敵に歌ってしまうのだ。

 スペインのクリスマス・キャロルはさすがに「スペイン歌曲のスペシャリスト」と言われる工藤さん、思わず溜息が出てしまう。イタリアの底抜けの明るさとは少し違う、哀愁を帯びた「鳥のうた」は心にしみじみと沁みて来る。サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」やサラ・ブライトマン&A・ボッチェルリの「旅立ちの時」がきこえて来た時は一瞬びっくり! しかしその賛美を聴き、更に歌詞カードに書かれている聖句を読むと(聖句が歌詞になっている曲以外では冒頭にみことばが添えられている。)工藤さんがどのような思いでそれぞれの曲を選び「演奏」ではなく「賛美」しているかが伝わって来る。

 クリスチャンでない方にも、クリスマス時期に関係なくいつでもプレゼントすることができる、主の愛と、主への愛がたくさん詰まっている内容の濃いCDである。