書評Books 誤った理解から解放し本当の安息を与えてくれる本

元兵庫大学大学院特任教授 窪寺俊之

 

『イエスと共に過ごす
安息日』
豊田信行 著
B6判・定価1,430円(税込)
いのちのことば社

豊田信行牧師が毎週ニューライフキリスト教会で語られた説教に編集を加えた書物『イエスと共に過ごす安息日』が出版されました。一読して豊田牧師が祈りの中で言葉を紡いだことがわかります。
全体が五章で構成されていて、そのテーマは安息日です。この書物の背後には、豊田牧師の苦い経験がありました。「『限界まで』『力尽きるまで』は自分自身をささげ尽くさなければと思うと、休むことに罪責感のようなものを感じました」(四頁)と語っています。その中から福音的理解に立ち返ります。霊性神学者ダラス・ウィラードに出会い、安息日の本質は礼拝にあることに気づきます。こころも生活も神様に全く委ねて、主を崇める時、安息の喜びが得られるのです。さらに、「安息日は……神を礼拝し、隣人愛に生きるための要なのです」(二〇頁)とあります。
神様への信頼が本全体に流れています。「人生の向きを神への礼拝に向けるとき、人生が礼拝(神)中心に回り始めます。すると、神が人生を統合してくださり、すべての活動に一貫性が与えられるのです。不思議と無駄な働きがなくなるのです。心配や恐れでバラバラに引き裂かれた心が一つになっていくのです」(六一頁)とあります。さらに、もう一歩踏み込んで、「安息日は、自分の働きを過大評価している人への挑戦なのです」(七六頁)と書いています。「キリスト者は自分の働きなしに世界(自分が置かれた世界)が回ることをへりくだって認めなければなりません」(七六頁)とあります。自分がしなくてはという自信過剰への大きな警告です。神様の前に謙遜にさせられる言葉です。
この書物には、A・J・ヘッシェル、E・H・ピーターソン、H・ナウエン、 E・フロム、W・ブラウン、J・ピーパーなどのユダヤ教の神学者、牧会学者、カトリック神学者、精神分析家など、宗派、教派を超えた多くの人たちが出てきます。現代人の多くに訴える内容になっています。
労働、勉強、勤勉の誤った理解から解放し、本当の安息を与えてくれる本です。