南アフリカへ宣教師として派遣されていたウォルター・バローは、南アフリカのケールドンで開かれたキリス者学生運動の年会で84歳のアンドリュー・マーレー（1828-1917）に出会った感想をこう述べている。

　「彼が、町の中央広場に面したオランダ改革派教会の大会堂で、息をこらして彼の言葉を聞く聴衆に預言者の迫力をもって計り知れないキリストの富を説教した時（45キロにも満たないきゃしゃな体格にもかかわらず）、その響き渡る声は会堂にみなぎりました。

　大会に出席していた教職者たちは、ある朝、教会の牧師館で博士とお会いするよう招待を受けました。……輝いた顔は、私たち全員に対する優しい微笑をたたえ、博士は冒しがたいほどの思慮深い雰囲気に包まれていました。

　全員が顔をそろえると、マーレー博士は静かにこう言いました。『祈りましょう』。その祈りの祝福が今も残っています。お会いする前から、私たちは皆博士が世界的に有名な信仰書の著者であり、南アフリカでもっとも愛されている説教者であることを知っていましたが、あの祈りの後、私たちは、自分たちが神の人の前にいることをはっきりと知ったのです」

　多くの人に影響を与えたマーレーは、神との深い交わりを大切にしていた。それもまた多くの試練を通して教えられたことだった。マーレーは、聖職者として脂の乗り切った時に、若い頃に長く続いた病気のため倒れた。講壇に立つことができなかった2年の間に、神はマーレーと神との関係を妨げていたものを取り除いた。マーレーは心の中を支配していたプライドと自己満足と戦いぬき、本質的な信仰と神にすべてを委ねた人生の意味をはっきりと理解したのだ。

　その生涯の著書は240冊にものぼる。また祈りの人でもあった。神との個人的なデボーションを通して得る喜びと交わりが人生の最も大切なことだと確信し、神にすべてを任せて生きることを求め続けた。