書評books 弱さや失敗から生じる「恥」からどう解放されるか

CLSKクリスチャン・ライフ成長研究会主事
カンバーランド長老教会あさひ教会協力牧師 松本雅弘

 

『もう、自分を隠さない 恥を癒やす大いなる恵み』

ケン・シゲマツ 著
重松早基子 訳
四六判・224頁 定価1,980円(税込)
いのちのことば社

 

本書は、ケン・シゲマツ氏による三冊目の著作で、翻訳は妻の早基子氏によるものです。以前の二冊は「安息」がテーマでしたが、本書は信仰生活における「shame=恥」に注目し、それがいかに「罪」の問題と深く関わっているかを説いています。
ただし単なる「解説」ではなく、著者の少年時代の過ちや思春期に経験した「足りなさへの不安」、他者との比較から生じる劣等感、牧会の現場に出た後も「ねたみ」との戦いや自分の「限界」などを通して、自らが体験した「恥」との取り組みを証しするものです。そして何よりも圧巻は「エピローグ」での赤裸々な証しなのではないでしょうか。
題名が『もう、自分を隠さない―恥を癒やす大いなる恵み』とあるように、自らの弱さや失敗を包み隠さず明らかにし、そこで生じる「恥」から、神の恵みによってどのように解放され、癒やされていったのか、どうやって日々主イエスと共に歩んでいくのかがやさしく語られることで、同じような課題を抱え生きている私たち読者にとって、大きな励ましと希望を与えるメッセージとなっています。
「私たちの問題は、細胞組織の中に蓄積されています」と指摘する黙想指導者T・キーティングの言葉が引用され、「自分の力で安心、愛情、尊敬、パワーやコントロールに対する執着心や依存」という罪の傾向が脳の組織にプログラミングされているという絶望的な現実が突きつけられる一方で、聖書の教えにシンプルに従い、聖霊により頼み、神の恵みに注目して生きることこそが、実は脳の既存の神経伝達経路に書き換えが生じるのだという、最新の科学研究成果からの話などは説得力があり興味深く読みました。
各章の最後にある「神の愛を経験するための祈り」や「言葉による黙想」などの霊的エクササイズに加え、「学びのための質問」も有益です。個人で読むことはもちろん、信仰の友と共に小グループテキストとして用いるのも最適です。心からお薦めできる一押しの信仰書です。