書評books 懸命に生きるすべての「あなた」に!

サンタバーバラ・ベタニヤ会衆派教会・日本語部牧師 一場茉莉子

 


『信じること、生きること 大人になった「僕」が、10代の「僕」に伝えたいこと』
朝岡勝 著
B6変型判・120頁
定価1,430円(税込)
いのちのことば社

 

本書は、月刊「百万人の福音」に連載された十二のエッセイと、新たに加えられた一つの章、「まえがき」「あとがき」から成っています。副題のとおり、若者に向けて、著者が自身の歩みを分かち合いながら語る内容となっており、そこには一貫して、次世代への愛、優しさ、敬意が流れています。漠然とした誰かにではなく、あの人、この人に伝えたいと、祈りつつ筆を取る著者の姿をすぐそばに感じさせる一冊。ひたむきに魂と向き合い続けてきた伝道者、牧会者ならではの想いがぎゅっと詰まっています。
本書を読み進めていくと、著者のさまざまな姿に出会います。ある時には幼い息子のような少年。ある時には思春期の悩める青年。またある時には若き伝道者。そして父であり、円熟した牧者である著者。少しでも自分を良く見せようとする大人で溢れる中、次世代に向き合うため、どこまでも偽りなく、ありのまま自らを差し出す著者の迷いのなさは、読者の心を開き、福音の前へ押し出します。まさに多感な中高生が探している本当の大人、本気の大人をここに見出すのです。それは若い魂のみならず、すべての信仰者に寄り添う生きた言葉です。
あとがきでは、昨年末からの体調不良の中での経験が語られます。生き急ぐように走り続けてきた著者が、前に進めなくなり、立ち止まり、揺さぶられ。しかし今、一歩、また一歩と踏み出している。人生という、どこまで行っても楽ではない現実の只中で、それでも信じつつ、生きつつ、待ち望みつつ、歩き続ける著者の姿。迷いながら、悩みながらでもいい。立ち止まってもいい。答えを得るより、問いを大切に生きていっていい。キリストの十字架と復活の確かさに支えられているから、私たちはそれでも歩んでいける、いやそれが尊いのだと、著者の渾身のメッセージは読む者の心を深く打ちます。
もう一度歩み出そう、諦めずに前を向こう。背中を押してくださっている神の御手を感じさせ、若者にも元若者にも、今日を生き抜く力を与えてくれる、そんな珠玉の一冊です。