特集 熱き聖書漫画 『キング・オブ・キングス』 『キング・オブ・キングス』出版に寄せて
今や漫画は若者だけのものではなく、あらゆる世代が親しんでいる。イエス伝を劇画調で迫力たっぷりに描いた新刊『キング・オブ・キングス』もまた、幅広く手に取ってもらいたい一冊。本書について、作者の思いも合わせて紹介する。
『キング・オブ・キングス』作者 張 文偉
このたび、日本で『我是王』(邦題『キング・オブ・キングス』)が出版されることを、神様に感謝しています。
私は漫画家として香港で活動していましたが、漫画で神様に仕えるという志を見失い、行き詰まっていました。そんな時、オーストラリアのミニストリーに声をかけてもらい、聖書漫画『受難』(全二巻・二〇〇五年、香港版刊行)の制作に携わりました。これが転機となって、私は初心に立ち返り、聖書漫画に本格的に取り組み始めました。制作工房「Capstone Workshop」を立ち上げ、二〇一五年には『使徒行伝』(全三巻)を完結させました。
その後、次のアイデアを祈り求めるなかで、福音の核心である四福音書を題材にキリストの生涯を描く『我是王』の着想を得ました。私は、前作以上に深い聖書理解によって取り組みたいと願い、聖地取材を敢行しました。自分の足で荒野を歩きながら、バプテスマのヨハネが荒野でどのように生きたか、イエスが四十日間誘惑されたのがどのようなものであったかを思い巡らした経験は、漫画づくりに大きなインスピレーションを与えてくれました。
技巧的には、成熟した表現をと腐心し、プロット作りや登場人物のキャラクターデザインも試行錯誤を重ねました。一巻目を完成(二〇一八年発行)させるために五年もの年月がかかってしまいましたが、最終巻の第五巻は、いよいよ来年二〇二五年のイースターに完成します。
『我是王』の基本構想は、タイトルが示すように、「王」の物語です。結局のところ、誰が人間にとっての本物の王なのかということなのです。有史以来、歴代の王の中で、いったい誰が私たちのために犠牲を払ってくれたか。世代を超える罪を消し去る権威を、誰が持っているのか。そこを描きたいと思いました。
罪を描くことは必須でした。プロローグで天地創造からサタンの誘惑と背きの罪をしっかり描き、暗転、その後エルサレムにヘロデが王として入城する場面を描きました。ハスモン王朝の崩壊後の、ヘロデによる神殿拡張の歴史上の出来事を描くことで、当時のユダヤ人のメシア渇望を深く理解してもらいたいと考えました。預言者も神の言葉もない沈黙と絶望の時代のただなかで、神の約束は果たされていくのです。
前作漫画『使徒行伝』は、場面展開が煩雑で、登場人物もナレーションも多すぎるという反省点があったので、今作はメインのストーリーに集中し、場面展開をシンプルに、映画のカメラワークの手法も参考にしながら、絵の描写で物語を語れるように視覚的にも工夫しました。
キャラクターデザインは悩みました。コラムで制作過程のラフスケッチを載せていますので、ぜひそれも楽しんでください。マリアは美しく描きたいと思いましたが、それ以上に彼女は敬虔な母親であり、ユダヤ人らしさも表現しなくてはなりません。イエスよりも実は難しかったのです。日本で人気の少女漫画のヒロインのように目が大きい人物像にはできませんでしたね。
この漫画は、解説コラムも充実しています。クリスチャンにとっては聖書理解が深まる助けになり、聖書を読んだことのない人には、聖書に親しむきっかけになってくれたらうれしいです。解説を書いてくださった建道神学校の陳韋安博士との出会いを感謝しています。その素晴らしい文章のおかげで、読者が救い主をより深く知ることができると確信しています!
香港では、一般書店でも『我是王』が並び、中学校の先生が生徒のために私の漫画を買ってくれたり、図書館で生徒が借りられるようにしている学校もあります!
一巻目は、イエスの公生涯の直前で終わります。最後の場面は、時が満ちるまで、イエスが大工の家で三十年間という歳月を待っていたことを示す印象的なシーンとして描きました。二巻目はいよいよ公生涯へと入っていきます。ぜひ楽しみにしていてください!(*メールインタビューと本人の証し文、『我是王』あとがきから再構成)