書評books 旧約聖書、どこを切ってもイエス・キリスト

日本福音同盟理事長 水口功

 


『旧約聖書におけるキリスト』
小山田格 著
B6判・320頁
定価2,640円(税込)
いのちのことば社

 

待望の新刊が発行されました。『旧約聖書におけるキリスト』の著者、小山田格氏は、ライフワークとして書名のテーマに取り組んでこられました。今から約三十年前、私がKGK(キリスト者学生会)主事をしていた当時、夏期学校に著者を講師としてお招きしました。そこで著者が語られたメッセージが「旧約聖書、どこを切ってもイエス・キリスト」でした。旧約聖書三十九巻各書がイエス・キリストを指し示していることを、金太郎飴をたとえに、力強く当時の大学生たちに語ってくださいました。
旧約聖書は難しい、通読が容易でない、とよく聞きます。この課題に対処する一つの鍵は、ある興味関心、テーマを定めて通読することだと思います。本書は旧約聖書各書とイエス・キリストとのつながりをわかりやすく説いています。「創世記におけるキリスト」から「マラキ書におけるキリスト」まで、各書にイエス・キリストの到来を預言することば、型(タイプ)、キリストの顕現などが見られることを丁寧に取り扱っています。確かに旧約聖書三十九巻の中には、自分で通読しただけでは「どこにイエス・キリストとのつながりがあるのか」と疑問を持つ箇所もあるかもしれません。例えば、もともと正典に入るかどうかで議論された雅歌はその一つです。その疑問に対して本書は、「『雅歌』の中では、神の愛が歌われています。……私たちクリスチャンは、ソロモンをキリスト、おとめは教会、あるいはクリスチャン一人一人と考えます」(二〇四頁)と定義し、雅歌のソロモンがキリストの愛を明快に指し示していることを教えてくれます。読者は本書を通して、旧約聖書とイエス・キリストとのつながりの深さや豊かさを、驚きをもって発見することでしょう。
なお本書の「あとがき」には、著者がご自身の生涯を振り返った証しが生き生きとつづられています。そこに本書を著すきっかけとなった人たちとの出会いや出来事が記されており、たいへん読み応えがあります。本書に触れ、学ぶことを通して、きっと旧約聖書がより身近に感じられるようになることでしょう。