NEWS VIEWS FACES Meg&KOJI NEWアルバム「Joy!」
礒川道夫
ライフ・エンターテイメント チーフ・プロデューサー
なぜこの時代に必要とされているのか?
ブラックゴスペルの本場アメリカでも、日本がゴスペルブームなのは良く知られている。日本の各地で、クワイアが誕生し、一般の音楽学校や、文化教室でもゴスペルワークショップが行なわれていた。アメリカからクワイアチームが、今年も何組来日しただろうか。そのほとんどの宣伝アピールは、「天使にラブソングに」か「MAMA I WANT TO SING」に関係したクワイヤーとの売りである。
しかしこのところ、このムーブメントにも変化が見られる気がする。まず「~もどき」のゴスペルワークショップが姿を消し、本物志向のワークショップが残り、メンバーも本物志向になって来ているのではないか。
先日来日した「ウォルター・ホーキンス」のようなコンテンポラリー・ゴスペルを聴いたり、今度大分に初来日するあの有名な『Total Praise』『Center of My Joy』などの作者であるリチャード・スモールウッドの音楽に耳を傾けてくれるゴスペルファンが多くなって来たこと、「WOW GOSPEL」のアルバムも薦めてくれるリーダーたちのおかげで、いつも注文をいただけるようになった。
もう一つの傾向は、日本語でゴスペルを歌う流れである。藤波慎也や木村‘HIRO’浩幸らがこれまで挑戦してきたが、いよいよ大御所の登場である。ファーストアルバム「Come On Everybody」を出したころのPiano KOJIは日本語で歌うことに大反対であったが、どこでどう変えられたのか、日本語で歌うことの意義を見出し、今完全日本語オリジナル版に挑戦している。彼曰く「これまでコマーシャルソングや、日本のポップスの作曲をして来たが、こんなにプレッシャーを感じたことはなかった」
日本語で歌う場合は、どうしても日本語のハンディで、意味が十分伝えられなかったり、音符に乗り切れなかったりしていた。「賛美します」「主よ」「愛します」の羅列ではゴスペルのスピリチャルの部分は損なわれてしまう。
今回のアルバムは、ブラックゴスペルのスピリチャルな面を失ってはいない。なにしろ、この曲を聴いたアフリカンアメリカ人たちが、涙を流して、「意味はわからないが、胸に響く、何と歌っているのだ」と尋ねて来たというのだから驚きだ。アメリカ人が演歌を歌っていれば、お世辞にほめたくなる感覚で、日本人がゴスペルをアメリカで歌っていると、反応してくれるケースがあるが、Meg&KOJIの場合はまったくこれとは違ったようだ。
日本語で歌うこのアルバムは、ブラックゴスペルとPraise & Worshipの垣根をなくしてくれるアルバムとも言える。ぜひ聴いてほしい。