みことばの説き明かし、神学研究、思索の業績を集大成
日本の改革派教会の礎を築いてきた牧師であり、キリスト教界、福音派の発展に大きく寄与してきた神学者であり、多くの後進に影響を与えてきた教育者の、みことばの説き明かし、神学研究、思索の業績を収載する著作集全五巻。第一巻は「創世記講義」。
全五巻のラインアップ
第一巻 創世記講義Ⅰ
第二巻 創世記講義Ⅱ・ヨブ記講義
第三巻 出エジプト記講義
第四巻 神学論文Ⅰ
第五巻 神学論文Ⅱ
*2024年に完結予定
各巻A5判
クロス装・上製 函入
定価5,940円(本体5,400円+税10%)
編集 『安田吉三郎著作集』
編集委員会
(日本キリスト改革派 神港教会)
安田吉三郎著作集推薦のことば(順不同)
御言葉の多様性を見事に展開し、教会を建て上げる聖書学がここに
安田吉三郎先生の聖書講解は、聖書の学びを志す者の手を取って、聖書という深遠な森の中を同伴してくださるような性質を持ちます。読者は、いつの間にか聖書の深みに導かれ、新鮮な喜びを味わうことでしょう。また安田先生は、改革派の神学者であり、教会の神学者です。それゆえ聖書学の視点からくる御言葉の多様性が、聖書全体を貫く救済史やその体系と見事に調和しています。読者は、聖書という森全体の見取り図を持ちつつ、安心して、一つ一つの木々の豊かさを堪能することができます。それこそが、教会を建て上げる聖書学です。その傑出した成果がこの著作集だと言えます。一人でも多くの方に読んでいただきたいと思います。
神戸改革派神学校教授
袴田康裕
聖書的・教会的な神学が具体的に、どのようなかたちをとるかが明らかに
安田吉三郎先生は改革派教会の教師としての確かな足場に立ちつつ、幅広く柔軟に日本の福音主義諸教会に奉仕されました。その恵みに浴した者の一人として、その実りが公にされることを感謝します。
安田先生は説教者、聖書学者として御言葉の務めを果たされるとともに、教会の形成、礼拝の充実、伝道の進展のために教会政治、礼拝、詩編歌、教会建築など実践神学的な分野においても大きな貢献をしてくださいました。
この度の著作集出版によって、聖書的・教会的な神学が具体的にどのようなかたちをとるかが明らかにされるでしょう。それはまた後に続く私たちへの確かな指標と大きな励ましとなるに違いありません。心から推薦いたします。
学校法人東京キリスト教学園理事長・学園長
日本同盟基督教団理事長
朝岡勝
聖書神学と組織神学の豊かな総合的知識と、正統的で健全な信仰告白に堅く立つ
安田吉三郎先生の著作は、その学識の広さと共に、神学的論点の整理の面で傑出しています。具体的には、聖書神学と組織神学の豊かな総合的知識と、キリスト教会の広い教理史的水脈から汲み出した正統的で健全な信仰告白に堅く立ちながらも、現代的学説との対峙、対話の緊張関係を避けず、読者に、神学的問題点の所在を明らかにする配慮が行き届いています。読者は、現代の旧約学、聖書神学が直面する膨大な知識の渦の中でも、多くの有益で健全な指針を得られるでしょう。さらには、改革派神学の体系を正確に教授するのみならず、御言葉の神学の実践者として、長く、日本キリスト改革派神港教会の牧師として仕えつつ、教派全体の大会議長、神学校理事長を歴任される等、生きた現実の信仰者の群れに仕え続けたその姿勢から、読者は、主イエス・キリストへの信仰告白に生きるよう招く、説教者、牧会者の声を聴き取ることにもなるでしょう。
日本福音主義神学会全国理事長
日本キリスト改革長老教会東須磨教会牧師
坂井純人
神学的、信仰的に教会を指導しうる牧師
安田吉三郎先生は、日本キリスト改革派神港教会の牧師をつとめられ、その招聘に際し田中剛二牧師は、神港教会の牧師は「神学的、信仰的に教会を指導しうる牧師」でなければならぬとされたが、安田先生が適任である事は、『新聖書注解旧約3「ヨブ記」』を読めば分かる。
もう一つは、改革派教会における信徒の位置への着目である。西川重則長老によるヤスクニ反対を例に、信徒が提示した問いを、世と教会に関する委員会において「政治と宗教の問答集」に仕上げ、さらに50周年記念の「伝道宣言」に組み込んだ。すなわち、信徒の社会的実践と思想構築なしには改
革派教会の「伝道」は語り得ないとして、安田先生は改革派教会の神学における信徒の位置づけを示唆している(『神学論文Ⅰ』参照)。
恵泉女学園大学名誉教授
吉馴明子
聖書という深遠な森に確かな導き手によって分け入る喜び。
神学者として、牧師として。安田吉三郎の全体像とその魅力。
刊行のことば
日本キリスト改革派神港教会は、この度、安田吉三郎牧師の著作集を発刊いたします。安田牧師は、当教会で田中剛二牧師の司式により一九四七年に十七歳のときに受洗されました。奥様は、生粋の当教会育ちのお方です。一九七九年より約二十年間、田中牧師の後任として、当教会牧師としてご奉仕くださいました。安田牧師の薫陶を受けた者たちが、今の教会を支えています。教会を愛し、神学に打ち込み、御言葉で養ってくださった安田牧師の著作を後世に残したいという思いが、教会に与えられました。先生に完成した本をお見せできないのが心残りですが、祈り支えてくださった前任の先生の出版に在職中の最後に関わることができ、主の導きを覚えています。
安田牧師は、一九六二年より米国ウェストミンスター神学校で旧約学を学び(Th.M. 取得)、帰国後は、神戸改革派神学校で旧約学等を教えられました。旧約学者であり文学に造詣の深い安田牧師は、『日本語による一五〇のジュネーブ詩編歌』の作成に情熱を注ぎ、日本キリスト改革派教会の大会の委員会活動において、すべての歌詞を一音符一字の原則に基づいて他の翻訳を参照しながら原語からひとりで整えてくださいました。この詩編歌は、今日、教派を超えて用いられています。当教会は、詩編歌の賛美をリードするようにと、一九九七年に竣工した新会堂に二〇〇二年にミーントーン調律のパイプオルガンを導入しました。会堂建築と礼拝と詩編歌に関する諸論文は、教会の実践の中で生み出されたものです。礼拝刷新を求めてなされた論考は、改革派教会の伝統に立つ多くの教会と共有できる霊的財産です。二巻の神学論文集には、これ以外にも旧約学に関する幾つかの論文と、折々の貴重な文章が収録されています。また安田牧師は、田中剛二牧師の著作集作成にご尽力くださり、それで、田中牧師を紹介する文章が収録されています。
著作集は全五巻で、うち三巻は創世記と出エジプト記とヨブ記の解説です。ヨブ記研究は、留学中の修士論文のテーマで、安田牧師のライフワークです(二〇〇七年、神戸バイブルハウスでの講演原稿収録)。創世記と出エジプト記の収録原稿は、二十名ぐらいが集っていた安田牧師宅での「旧約聖書を読む会」の配付資料です(二〇〇七年六月一日〜二〇一二年十二月十四日、計八十八回、金曜日に月二回)。安田牧師は、これまで学んでこられたことを、引退後に信徒のためにまとめてくださいました。すぐ印刷できるほど精度の高い原稿が毎回用意されていたことは、安田牧師の誠実さの表れであり、本当に驚きです。出席しておられた方が全レジメを保管しており、今回役立ちました。本書を通して、読者の皆様が旧約聖書の真髄に触れていただけますならば、当教会として望外の喜びです。
主の二〇二三年三月
日本キリスト改革派神港教会前牧師 岩崎 謙
『安田吉三郎著作集』刊行委員会
安藤能成 朝岡勝 石原知弘 市川康則 岩崎謙 岩村義雄 岡田弥生 窪寺俊之 坂井純人 鈴木雅明 津村春英 袴田康裕 橋本昭夫 春名純人 樋口進 牧田吉和 水垣渉 横田隆 吉田隆 吉馴明子(音順)
安田吉三郎 略歴
1930年3月26日 神戸市に生まれる
1946 年初夏 関西学院大学学生の兄・安田良介に連れられて神港教会に初めて出席
1947年12月 日本キリスト改革派神港教会において受洗 司式田中剛二牧師
1952年3月 関西学院大学文学部英文科卒業(T. S.エリオットを研究)
1956年3月 神戸改革派神学校卒業
1956年10月 太田伝道所宣教教師に就職
1962年9月 米国ウェストミンスター神学校修士課程に入学
1964年5月 米国ウェストミンスター神学校より「ヨブ記の文学的構造」でTh.M 取得
1964年8月 日本キリスト改革派教会西部中会宝塚伝道所宣教教師に就職
1968年4月 神戸改革派神学校聖書学専任教授に就職、就職式講演題「イスラエルの神」
1975年9月 日本キリスト改革派東部中会に移り、キリスト改革派ジャパン・ミッションの協力教師として勝田台伝道所に就任
1979 年9月16日 ~ 2000 年3月26日(誕生日の日)まで日本キリスト改革派神港教会牧師。この間に、会堂建築、詩編歌の翻訳、マルク・ガルニエ社パイプオルガン設置決定
1980年9月 神戸改革派神学校教授に就任
1987 年10月~ 2 001年まで 神戸改革派神学校非常勤講師(神学校においては、ヘブライ語、ギリシア語、旧約緒論、旧約神学、旧約釈義、新約緒論、新約神学、新約釈義など担当)
1991年10月 日本キリスト改革派第46回大会において大会議長に就任。以後5 期連続(1996年10月まで)
1997年7月 諏訪哲夫神戸改革派神学校理事長の後を継いで、2000年7月まで理事長、以降2003年10月まで、常任理事
2000年4月~ 日本キリスト改革派教会引退教師
2023年2月26日 召天
【牧会教会履歴】
岐阜県美濃加茂市、太田伝道所(神学校卒業後直ちに赴任、1956年4月~ 1962 年)
兵庫県宝塚市、宝塚伝道所(西部中会阪神間開拓伝道として、1964年8月2日~ 1968年3月)
千葉県八千代市、C.R.C 勝田台伝道所(1975年9月~ 1978年4月)
同勝田台教会(1978年4月~ 79年8月、勝田台教会設立、初代牧師就職)
他に、園田教会、滋賀摂理伝道所、広島教会、灘教会等の代理牧師、宣教教師等を歴任
また、1985 年、日本福音主義神学会の理事長、淀川キリスト教病院理事などを務める。
【著書】
・新聖書注解シリーズ
旧約第3 巻 ヨブ記
旧約第4巻 エレミヤ書、哀歌
新約第3 巻 ヘブル人への手紙
・新聖書講解シリーズ
新約第6 巻 ローマ人への手紙
旧約第18 巻 ホセア書・ミカ書
・実用聖書注解 出エジプト記 ほか
【訳書】
・ライル福音書講解 ヨハネ3
・ティンデル聖書注解 ヨエル書、アモス書