EHCイタリア 荒廃したコミュニティーに神の光を
◆海外からの文書伝道レポートを紹介します。
国際EHCより
新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が起こったイタリアでは、市民の間で毎晩8時に家のベランダや窓辺に出て歌を歌ったり、拍手をもって医療従事者に感謝を表したりする動きが広まりました。EHC南イタリアのスタッフたちも同様に、近隣の人々と励まし合い、賛美をしてイエスの愛を伝えようとしています。
数か月前、EHC南イタリアのディレクターから、組織犯罪者がキリストに信仰をもった証しが寄せられましたので紹介します。神様の光は、最も暗い状況や地域をも照らされるという証しです。皆様がこれを読み、神様の慰めを見いだされることを願っています。
EHC イタリアからの証し
1960~70年代に、イタリアのナポリ郊外に「ル・ヴェレ」と呼ばれる大規模な集合住宅群ができました。しかし、そこは「カモッラ」と呼ばれる犯罪組織に占領され、麻薬、銃、貧困、マフィアの代名詞となりました。西ヨーロッパで最も活発な麻薬と武器売買の拠点になり、マフィア戦争のピークである2004年には毎日1人が殺害され、1日で100万ドル(約1億円)の麻薬が取引されました。現在は、ル・ヴェレの建物のうち、約半数が取り壊され、残りは荒れ廃れています。しかし、衰退したとはいえ麻薬の取引が続いています。
● サルバトーレの生活
サルバトーレはル・ヴェレで育ちました。貧しい大家族を養うため、中学生の時に兄を手伝って麻薬の運び屋を始め、週に約1,000ユーロ(約11万円)を稼ぐようになりました。その後、22歳で結婚。しかし2012年に、敵対するマフィア一族との闘争で兄が射殺され、サルバトーレも命を狙われるようになりました。彼は自分と家族を守らなければなりませんでした。妻のヌンツィアからカモッラとの関係を絶つように懇願されたサルバトーレは、卵を売るまともな生活を送ることを決心しました。しかし収入は90%も減り、苦しい生活が始まりました。
● ル・ヴェレへの思いを与えられた人々
マルコ牧師は、EHC南イタリアのディレクターで、南イタリアの家庭のすべてに福音を届けることを任されていました。彼は、ナポリにあるル・ヴェレについて新聞やニュースで見聞きするたびに、「神様、そこにいる人々のために何かなさってください」と祈っていました。そして、彼は神様から自分が遣わされていると気づき、何度もル・ヴェレに入ろうと試みましたが、ことごとく門番たちに阻止されました。カモッラのメンバーから許可されない限り、中に入ることはできなかったからです。
アルフォンソは伝道熱心なクリスチャンです。毎朝、車で息子を学校へ送るためにル・ヴェレの前を通ります。彼はそのたびに何かを感じていました。そしてある時、神様が「そこはあなたの相続地だ」とささやく声を聞いたのです。彼がそれを妻のインマコラタに話すと、彼女は犯罪や暴力がいまだにあると聞くル・ヴェレでの伝道に不安を抱きました。しかし祈りの中で、イエスの愛は誰にでも必要であると主に語られ、彼女は夫と一緒にル・ヴェレで伝道することにしました。
アルフォンソは10年間、地元の刑務所で伝道をしていたため、元受刑者であるル・ヴェレの人々とつながりをもっていたので、ル・ヴェレへ入る道が開かれました。アルフォンソとインマコラタがル・ヴェレに初めて入る前に、車中で開いた詩篇91篇には、このようにありました。「わざわいはあなたに降りかからず…」。建物に入って、階段の下を通りかかったインマコラタは、2年ほど前に、この場所を神様に夢で示されていたことに気づきました。人々が階段を上って神様に賛美歌を歌うという夢でした。彼女は神様がこの場所で何かすばらしいわざをなさることを感じました。
● サルバトーレと妻の回心
サルバトーレとヌンツィアは、ヌンツィアの25歳の誕生日に、2階にある彼女の母親の家に行きました。母親の家では、アルフォンソとインマコラタが近隣の人々に福音を分かち合っていました。アルフォンソとインマコラタは、サルバトーレとヌンツィアにもイエスのことを伝え、2人のために祈ってもよいか尋ねました。サルバトーレはそれを不快に思って、一度その場を去ろうとしたものの、バースデーケーキを切るまでは残ろうと、とどまりました。そしてアルフォンソたちが祈り始めた時、サルバトーレは主の臨在を感じたのです。ヌンツィアはめったに泣かない夫の顔に涙が流れるのを目撃しました。この時、福音への扉が閉ざされていたル・ヴェレに、救いが訪れたのでした。
その日を境に、サルバトーレとヌンツィアの生活は変わり始めました。2人は人生をキリストにささげ、新しく深い愛を経験しました。2人はアルフォンソとインマコラタに定期的に会い、少人数の集会にも参加するようになりました。アルフォンソは彼らをマルコ牧師に紹介し、教会とのつながりもできました。ヌンツィアは過去2年間でどれほど変化があったかを、こう述べています―「イエスは私たちを救ってくださっただけでなく、教会や友へ、そして希望へと導いてくださいました」。
● サルバトーレの現在 ~変えられた人生~
サルバトーレがル・ヴェレの中を歩いていると、人々は「イエスが来た!」と叫びます。それは、からかうだけではなく、もう自分たちの仲間ではないことを表す意味です。サルバトーレは、「私は完全に変えられました。これまでこの場所で生きてきた私の人生は、もはや過去の死んだものです。今、私が持っている唯一の武器は聖書です」と話しています。また彼は、生活は苦しくても、自分のことを愛し支えてくれる人々に囲まれています。そして、彼はアルフォンソと毎日会っています。「イエスに出会ってから、私は1人ではないことに気づきました。アルフォンソは、キリストにあって私の兄弟になりました」と彼は話します。
人生が変えられたのは、サルバトーレだけではありません。マルコ牧師は、サルバトーレとのつながりにより、ル・ヴェレへ福音を伝える道が開かれました。彼はアルフォンソと一緒にル・ヴェレの家庭のすべてにEHCのトラクトを届けています。毎週、さまざまな家で2~3の小グループが集まっています。
サルバトーレの妻、ヌンツィアは、「Salvatore」と刻まれたネックレスをいつも身につけています。それは夫の名前ですが、救世主を意味しています。
(国際EHC機関紙「Every Home」2020年春号より)