中村佐知著『まだ暗いうちに』出版記念 オンライン講演会を開催 講師・聴衆が世界中から参加して
■娘を亡くした悲しみから
中村佐知著『まだ暗いうちに』出版記念オンライン講演会が、3月27日(土)に開かれました。講演はZoomで行われ、いのちのことば社(東京・中野)にホストを置き、中村佐知さんと夫の昇さんがアメリカのシカゴからアクセス。参加者は日本だけでなく、世界中から100名以上が視聴しました。
昨秋発行された『まだ暗いうちに~スキルス胃がんで娘を天に送った母のグリーフワーク』は、著者の中村佐知さんが、次女の美穂さんを5年前に亡くした体験を綴ったブログをまとめたもの。講演では、佐知さんご夫妻が、それぞれの立場での思いを語られました。
■徹底して神様と取っ組み合う体験
講演ではさまざまなテーマにご夫妻が応えるかたちで進められ、「神様はなぜ娘が死ぬことを許されたのか」という問いに、佐知さんは、「神様からの答えをもらえるまで、徹底して取っ組み合った」と答えました。その過程で、神様はどういうお方かという信仰を問い直されることになったといいます。
また、悲しみへの向き合い方について、昇さんは、「佐知は感情を表し、ブログを書くことでグリーフワークになっていた」。一方ご自身は、「ひとりで考え、受け止める」という方法をとった。そうやってそれぞれが、「なぜですか」と問い続ける中で、自分たちが変えられていくのを感じたといいます。
佐知さんは、「霊的修錬」が役立ったことにも触れました。これは、祈りや礼拝、断食祈祷などだけでなく、神様に自分を開くために意図的、また定期的に行うあらゆる活動です。霊的同伴者と呼ばれる導き手と月1回会い、神様の慰めに自分を開くことにとても役立ったと話しました。そうした中で、たとえば植物に水をやることの中にも、神の息吹をもう一度確認でき、祈りの時へと導かれたとも。
昇さんは、アメリカの大学で地球物理学を教えていますが、美穂さんの死後、変化が生まれたと語ります。以前なら、レポートの提出が間に合わない学生、成績の悪い学生には、「努力が足りない」としか思わなかったとか。しかし、心や体に弱さがあったり、経済的に苦しく働きながら学んでいる学生など、背後にある彼らの事情を知り、できることはしようと思うようになったといいます。それは美穂さんが、うつ病に苦しみながらも弱さを抱えた人々を助けたことに思いを馳せる中で、神の愛の深さに気づき、近づくことができたからだとも。
■皆で分かち合って祈ることの大切さ
講演後に行われた質疑応答もたいへん内容の濃いものでした。
高齢の母が交通事故に遭い、ずっと意識不明で長期入院しているという方から、「神様は良い方だと思えない」という質問が寄せられました。これに対して、佐知さんは「今は、そう思えなくていいと認めてかまわない。私は神様との取っ組み合いを通して、この地上に起こる悲惨さが生む痛みを神様は味わっていて、自分がその痛みを共に体験しているんだと思えるようになった」と答えました。
霊的同伴者についてもう少し説明をという問いには、「問題の答えをくれるのではなく、その状況のどこに神がいるのかを一緒に探ってくれる存在。答えは本人が自分と神様の関係を探る中で見つけるもの」と応答しました。また、「日本のクリスチャンは、抱えている問題を教会で隠す傾向があることをどう思うか」という質問も。佐知さんは、「クリスチャンでも問題があるのは当たり前。親子、夫婦の人間関係に、経済問題など。皆で分かち合って、祈りましょう」
最後に昇さんは、「美穂に関する出来事を思い出す中で、美穂とのきずなは今も強くなっている。その意味で、私の中で美穂は生きているのだと思う」と語り、「早くまた会いたいね」と締めくくりました。
講演終了後には、各聴衆にアンケート画面が表れるようになっており、多くの方から回答を頂きました。「慰めを受けました」「ご夫妻の等身大の率直な思いが聞けて、良かった」という声が多く寄せられたほか、「今まで抱いていた神様のイメージとは違う神様に出会ったような気がします。今日、参加させて頂いて本当によかった」など、神様の思いを理解するのにも役立ったのは、感謝でした。今後も、編集局では、講演者や聴衆が世界中から参加できるオンライン講演のメリットを生かし、出版記念会やセミナーを開催していく予定です。 (砂原)