アブラハムとリディア夫妻の証し

　EHC国際本部より、中央アメリカでのアウトリーチの証しを皆様へお届けします。
　アブラハム・ロザノ氏はEHCの中央アメリカ地区の責任者です。これから彼が語るストーリーは、スリルに満ちた冒険の話でも、「何百人もが救われた」という話でもありません。また、中央アメリカのホンジュラスで行っている全戸配布を誇り高く語るような話でもありません。
　それはただ単に、「1人の魂の救いほど大切なものはない」という体験のストーリーです。
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　私は妻のリディアと共に、2018年から「アバランチェ・オブ・ミニストリー」というホンジュラスの全戸配布をしています。配布先の村に着いたら、「４日間できる限りのことをして、配布を完了する」というのを目標にしています。そのため、その村の教会を訪問し、協力を取り付け、祈りと配布のトレーニングをし、すべての家庭に配布ができるように計画を立てます。
　私たちが南部にあるヒカロ・ガランという村に入った時のことです。村に入るとすぐに、「この村は罪にとらわれ、人々が罪にまみれている」と感じました。後でわかったのですが、そこはホンジュラス南部において売春の中心地になっている場所だったのです。通りを歩いていると、顔を見れば罪のとりこになっている人々がわかるほどでした。
　椅子に座っている老婦人の周りに、若い女性たちが集まっているのを見かけた私たちは「おはようございます」と声をかけました。すると、すぐに若い女性たちは逃げていってしまい、老婦人だけが残りました。私は彼女に近づいて、「私はアブラハムと申します。お名前は？」と尋ねると、彼女は「フランセスカと申します。84歳です」と答えました。
　彼女は車椅子に座っていたので、彼女の腕の周りに手を置くと、「この人は、どこかが悪い」とすぐに感じました。「どこかご病気ですか？」と尋ねると、彼女は泣きだして、「あなたには、私のことなどわかりませんよ。私はひとりぼっちなのです。主人とは離婚し、脳卒中を起こして、今は病気で車椅子の状態ですよ」と言いました。
　私はこの女性に対し、あわれみでいっぱいになりました。友人や家族から捨てられ、また、愛されていると思っていた人たちからも捨てられたのです。私たちが声をかけた時には、一緒だった若い女性たちからも、置き去りにされました。
　私は彼女にこう伝えました。「フランセスカさん、あなたはひとりではありませんよ。主ご自身があなたの夫となり、助けたいと願っておられますよ。そして、あなたを本当に救いたい、と」
　翌朝、この老婦人はイエス様を信じました。たくさんのトラクトを配布した中で、救われたのは彼女1人だけでした。1人だけ。そうです、この証しは、「たくさん配布したのに1人しか救われなかった」という証しです。しかし、私はこのジカロ・ガランでの全戸配布が失敗や無駄だったとは思いません。この1人こそ、大切なのです。
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　アブラハム氏は、「私たちは福音を宣言し、配布します。同時に福音が必ず力をもって啓示されることを信じています」と語っています。
　この世界では、リスクに対してどのようなリターンがあるかと常に計算しています。しかし、私たちの福音では、1人の魂こそが、どんなリスクを払ってでも大切なリターンです。1人の回心は、盛大なお祝いに値するのです。（ルカ15：3～7）
　役に立たないものは捨てていくような社会にあって、無力な1人の魂の救いのために驚くほどの長い道のりを進んでいく愛は、福音の力を示しています。
　アブラハム氏のような人たちが、遠くまで足を運んで働きをなすことができるのは、皆様の祈りとささげもののおかげです。

「あなたがたのうちのだれかが羊を百匹持っていて、そのうちの一匹をなくしたら、その人は九十九匹を野に残して、いなくなった一匹を見つけるまで捜し歩かないでしょうか。見つけたら、喜んで羊を肩に担ぎ、 家に戻って、友だちや近所の人たちを呼び集め、『一緒に喜んでください。いなくなった羊を見つけましたから』と言うでしょう。 あなたがたに言います。それと同じように、一人の罪人が悔い改めるなら、悔い改める必要のない九十九人の正しい人のためよりも、大きな喜びが天にあるのです」
（ルカ15：3～7）

（国際EHCニュースレター2021年9月号より）