無牧教会と牧師をつなぐ
大学生の時にクリスチャンになった私は、「人の命に関わる仕事がしたい」と思い消防士になりました。念願の救助隊に入り、仕事も教会生活も充実していましたが、ある時クリスチャンの友人から、牧師がいない教会(無牧教会)が増えていること、その結果閉鎖する教会も少なくないことを聞き、たいへんショックを受けました。
日本のプロテスタント教会約8,000のうち、300は無牧で、兼牧(1人の牧師が2つ以上の教会を牧会している)などを合わせると1,000教会になります。教職者の高齢化や地域格差も相まって、無牧教会はこれからも増えていくと予想されています。
涙とともに種が蒔かれた地で教会が閉鎖していく。そんなことがあってよいだろうか。「神様、困窮する教会に誰かを遣わしてください!」というのが自然と私の祈りとなりました。そんな中で「誰か、と言うな。あなたが行きなさい」と語られているように感じた私は、思い切って消防の職を辞し、神学校に入りました。その後アメリカで知り合った日本人を通じて茨城県の無牧教会に遣わされ、現在に至ります。
このような過程を経て痛感したのは、無牧教会についてのまとまった情報が、どこにもないということでした。無牧教会は増えているはずなのに、どこにあるのか、どんな牧師を必要としているのかという情報がほとんどないのです。また教会の側も、私のように「無牧教会に遣わされたい」という思いを持つ牧師がどこにいるのかわからずにいます。
高齢化や地域格差はすぐにどうにかできる問題ではないけれど、この情報不足に関しては何とかできるかもしれない。そう信じて、東京基督教大学大学院で「無牧の教会に対するサポートシステムの構築」という論文を書きました。ご指導くださった岡村直樹先生はこのように励ましてくださいました。
「超教派の働きだし、難しさもあり、いろんな意見もあるでしょう。もしかしたら、この働きを通して1つか2つの教会しか助けることができないかもしれない。それでも、この働きをやる意味は十分あるんじゃないでしょうか?」
今も心の支えとなっていることばです。
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現在、お茶の水クリスチャン・センター(OCC)の後援を受けながら、OCC無牧ミニストリーズとして活動しています。牧師を探す教会と、教会を探す牧師が出会うプラットフォーム的な働きです。これはもちろん教団の人事に取って代わろうとするものではありません。教団によってカバーされている教会はそれでよいのですが、それが届かない教会もたくさんある。どうしたら良いかわからずにいる教会が、再び希望をもつためのお手伝いができたなら幸いです。もしお困りでしたら、ぜひ一度ご相談ください。料金は一切かかりません。
昨年、この働きを通して長崎県の引退牧師が、北海道知床の、しかも他教団の教会に赴任しました。笑顔で写真に収まる教会のみなさんを見た時、「やってきてよかった」と思いました。多くの無牧教会がこのように回復することを望みますが、たとえそうでなくても、この小さき者の人生が、主とその御体である教会のために少しでも用いていただけるなら、こんな光栄なことはありません。