歴史散歩[5]「いのちのことば社70年史」より

キリスト教会における時代の変化に併せて

今回から数回は、これまでの出版を、キリスト教会における時代の変化と併せて振り返ってみたい。

海外の霊想書、米国の福音派

創業当初からしばらくは、いのちのことば社の出版物のほとんどが翻訳書だった。そして今も翻訳書は、私たちの出版物の少なからぬ割合を占めている。海外の優れた著作の翻訳は、いのちのことば社の大きな財産となった。代表的な著者としては、C. H.スポルジョン、A.マーレ―、F. B.マイアー、A. W.トウザー、D. M.ロイドジョンズなどがいる。
創立70周年記念として、そのような翻訳書籍中から、特に今後も読み継がれていってほしいものを厳選し、「ニュークラシック」と題するシリーズとして刊行を開始した(一部日本人著者の本も含まれる)。
翻訳書の原書の多くは米国のいわゆる福音派に属する出版社の書である。米国の福音派は戦後の日本宣教で大きな役割を果たしたが、テレビ伝道者のスキャンダルが続き、また特に湾岸戦争時(1990年)などに政局を左右する団体として日本でもクローズアップされ、批判的な報道がなされるようになった。
翻訳書に限った問題ではないが、原書の選択は、著者の社会的な思想についても勘案しつつ慎重に行っている。

聖書関連の大型企画

大型企画の先駆けとなったのは1961年刊の『聖書辞典』であるが、特筆すべきは「聖書 新改訳」の発行に併せて刊行された『新聖書注解シリーズ』全7巻(1972-77年)、『新聖書講解シリーズ』(1982-89年)、『新聖書辞典』(1985年)などである。これらの企画は、一連の本格的な辞典、注解がすべて日本人の書き下ろしによって行われたという点で、いのちのことば社史上、記念碑的な出版となった。同時に、福音派の神学者、牧師の特に聖書学における、この時点での成熟度の指標でもある。これについては、きわめて高い水準を示す内容がある一方で、米英の書にかなりの程度依存した執筆が散見されるという指摘も認めなければならない。